Switch news

知っておきたい世界のニュース

1970年代に禁止された化学物質が、海溝の最深部に住む生物から高濃度で検出される

1970年代に禁止された化学物質が、海溝の最深部に住む生物から高濃度で検出される
YouTube/Newcastle University

すでに使用が禁止されている化学物質が、海にどのくらい残っているのかを測定する調査が行われ、海溝にもかなりの濃度で残されている可能性が示された。

深海の生物から高濃度の物質を検出

 

この調査を行ったのは、イギリスNewcastle大学のAlan Jamieson博士率いる研究チーム。

 

英メディアのBBCによれば、彼らは深さ約10kmもあるとされる世界最深のマリアナ海溝と、南太平洋に位置するケルマデック海溝にて、特別な潜水艇を用い探査を行ったという。

 

そして最深部において甲殻類の一種とされる端脚類の「アンフィポッド」を捕獲し、脂肪組織にどのくらい化学物質が含まれているのかを分析したそうだ。

 

その結果、2つの海溝とも約7000kmも離れていたにも関わらず、それぞれのサンプルからは高濃度のポリ塩化ビフェニル(PCB)やポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)などの汚染物質が見つかった。

Newcastle University

自然に分解されにくい化学物質

 

PBDEは燃焼抑制剤として使われ、PCBは電気の絶縁体として1930年代頃から製造または使用されてきたという。

 

その後、PCBの製造は1979年にアメリカで、さらに2001年の残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約でも禁止されたそうだ。

 

しかしPCBは自然に分解されにくい性質で、1930年代から1970年代の間に作られた製品は約130万トンにも及ぶと見られ、事故によって、あるいはゴミ処理場などからも海へ排出されたとみられている。

中国の水田に住むカニの50倍の濃度

 

もっとも研究者によれば全体の汚染レベルがどの程度なのか評価を下すのは難しいとしているが、マリアナ海溝での最も高いPCBのレベルは、水質汚染が深刻な中国の遼河を水源とする水田で捕獲されたカニより50倍も高かったという。

 

また今回採取された「アンフィポッド」の中には、太平洋北西部で汚染が進む日本の駿河湾でのサンプルと近い汚染レベルのものも含まれていたそうだ。

汚染物質が食物連鎖で蓄積していく

 

研究者らによれば、PCBやPBDEは汚染されたプラスチックの破片や、海底に沈んでいく死んだ魚などの動物を通して太平洋の海溝に蓄積され、「アンフィポッド」や他の深海生物によって食べられている可能性があるという。

 

また化学物質は食物連鎖によって動物の体内に蓄積するため、死んだ後に海底にたどり着いた時には表層にいる時よりも濃度が何倍も高くなると考えているそうだ。

 

Jamieson博士は報告において次のように述べている。

 

「地球の最果てにある最も近づき難い生息環境において、私たちがこれらの驚くべき汚染物質のレベルを発見した事実は、長期にわたって人間が地球に対して破滅的な影響を及ぼしていることを強く思い知らされます」(了)

 

 

下の動画は「アンフィポッド」を捕獲する場面を捉えたもので、特に動きに大きな変化はない。ご了承いただきたい。

 

出展元:BBC:Banned chemicals persist in deep ocean(2/13)

出展元:Newcastle University:Banned chemicals from the 70s found in deepest reaches of the ocean(2/13)

記事が気に入ったら
Switch Newsをフォローしよう!


Return Top