新型コロナ パンデミック後も、CO2の排出量がすぐに元へ戻る:調査機関レポート
新型コロナウイルス感染症の世界的流行のせいで、経済活動が停滞・後退し、大気中に排出されるCO2(二酸化炭素)の量は劇的に減った。しかし、各国で経済活動が再開される中、一度は減った排出量が、新型コロナ流行以前のレベルにほぼ戻っていることが、グローバル・カーボン・プロジェクト(Global Carbon Project)の調査で分かった。
2020年のCO2排出量減少幅は過去最高
グローバル・カーボン・プロジェクトは、世界の多くの研究者が参加協力する国際共同研究。今回の調査に関わったアメリカ・スタンフォード大学のRob Jackson教授は、次のようにメディアに話す。
「世界の経済が回復すれば、化石燃料からの(CO2)排出量は一瞬で元に戻るだろうと予想していましたが、まさにその通りになりました」
新型コロナウイルスが蔓延した2020年、化石燃料からのCO2排出量は前年(2019年)のレベルから5.4%減り、340億8000万トンになった。これは「これまでで最も大きな減少幅です」とJackson教授は言う。
ところが、最新の調査に基づいて今年2021年の排出量を見積もったところ、コロナ禍以前(2019年)のレベル(約360億4000万トン)にほぼ戻るだろうということが分かった。
「私たちはまだ、世界のインフラを根本的に変革してはいません」と、Jackson教授は排出量がリバウンドした理由に触れる。化石燃料を基本にした産業構造そのものが変わらない限り、継続的な排出量削減は難しい。これは当然のことと言っていいだろう。
大幅減少も、20本の喫煙が19本になった程度
2020年のCO2大幅減少も、実は全体に大きな影響を与えていないようだ。つまり、大気中の二酸化炭素を減らすには、これくらいの排出量減少では足りない、とコロラド大学の気候科学者であるKristopher Karnauskas氏は言う。
「2020年にCO2が340億8000万トンになったぐらいで、興奮してはいけませんよ。これは、禁煙して1日20本のタバコを19本にしたという程度なんですから」
先日閉幕したCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)では、石炭火力発電の「廃止」は合意に至らなかった。世界が実効性のあるCO2削減に向かうには、まだ時間がかかりそうだ。(了)
出典元:Global Carbon Project:Global Carbon Budget(11/4)
出典元:Global Carbon Project:Temporary reduction in daily global CO2 emissions during the COVID-19 forced confinement(2020/5/18)
出典元:Mashable:A terrible pandemic didn’t stop the rise of CO2(11/3)