ヨーロッパに生息していた最後のパンダ、ブルガリアの化石から判明
ヨーロッパにジャイアントパンダの近縁種が生息していたことが、以前発掘された化石から明らかになった。
1970年代後半に発掘される
その化石は、1970年代後半にブルガリア北西部で発掘された、上顎の裂肉歯と上顎の犬歯とされている。
やがて化石は、古生物学者イワン・ニコロフ氏によってブルガリア国立自然史博物館に保管され、この動物は「Agriarctos nikolovi」と命名されたという。
そして最近、地下室に眠っていた2つの歯の化石の分析が進められ、この動物が現代のジャイアントパンダの近縁種で、新しいパンダの種であることが明らかになったそうだ。
竹に頼っていない可能性
このパンダは600万年前(中新世)にブルガリアの森林湿地帯に生息していたと考えられるが、現代のジャイアントパンダの直接の祖先ではないという。
また食事も竹に頼っていたのではなく、主に植物を食べていたと考えられている。実際、現代のパンダが主食にしている定番の植物(竹)の化石は、ヨーロッパで発見されるのは稀だとか。
特にブルガリアの後期中新世には竹はほとんどなく、このパンダの歯も木質茎を粉砕できるほど強くないように見受けられるそうだ。
そのため柔らかい植物を食べていた可能性があり、このことはこのグループの進化史において、植物に依存する一般的な傾向が強まったことと一致しているという。
気候変動で絶滅か?
また歯は捕食者に対する十分な防御力を備えていたと推測され、犬歯の大きさは現代のパンダの歯とほぼ同じであることから、体も同じ大きさか、それよりわずかに小さかったと考えられている。
しかしこのパンダの種は、気候変動の影響で絶滅した可能性があるという。
研究者は、地中海沿岸が干上がり、周辺の陸上環境が大きく変化した現象「メッシニアン塩分危機」が、原因だと考えている。
つまりヨーロッパ南部の中新世末の気候変動が乾燥化を招き、ヨーロッパ最後のパンダの存在に悪影響を及ぼした可能性があるそうだ。(了)
出典元:Taylor and Francis:New discovery of panda species which may have been Europe’s last(8/1)