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コケの胞子が宇宙空間で9カ月間も生存、北大などの研究チーム

コケの胞子が宇宙空間で9カ月間も生存、北大などの研究チーム
X_NASA's Johnson Space Center

日本の北海道大学などの研究チームが、国際宇宙ステーション(ISS)の外に置かれたコケ(苔)のサンプルを分析し、過酷な宇宙空間でも一定期間生存できることを実証した。

 

宇宙で紫外線に曝されても発芽率は86%

 

北海道大学などの研究チームは、胞子嚢に包まれたヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)の胞子を、「シグナスNG-17」宇宙船に搭載してISSに送ったという。

 

これを異なるフィルター設定のサンプルホルダーに入れ、ISSにある日本の実験棟「きぼう」の外に取り付け、2022年3月~12月までの約9カ月間、宇宙空間にさらしたそうだ。

 

そしてサンプルが地球に帰還した後、研究者たちはすべての胞子が高い発芽率を示したことを発見。宇宙で紫外線に完全に曝されたサンプルでさえ、発芽率は86%だったという。

 

また宇宙空間で可視光と紫外線を遮蔽した群、紫外線だけを遮蔽した群、地上で可視光と紫外線を遮蔽した群は、いずれも95~97%以上発芽したそうだ。

 

一方、宇宙に曝されたサンプル中の「葉緑素(クロロフィル)」の一種は、劣化の兆候を示していたという。

 

酸素生成などにも役立つ可能性

 

研究論文の筆頭著者である北海道大学の藤田知道教授は、次のように述べている。

 

「コケは食用にはならないかもしれませんが、その回復力は宇宙における持続可能な生命維持システムの開発に示唆を与えてくれます。コケは酸素生成、湿度制御、さらには土壌形成にも役立つ可能性があります」

 

「iScience」誌に発表された論文の中で、藤田教授らは3種類の異なるコケを、地球上で模擬宇宙環境に曝した方法も紹介。胞子嚢と呼ばれる構造に包まれたコケの胞子が最も耐性が高く、1平方メートルあたり10万ジュールを超えるUVC放射線にさらされた後でも、発芽できることが分かったという。

 

さらに実験を行ったところ、これらの胞子嚢に包まれた胞子は、真空環境、極低温、高温、真空中の放射線にも耐性があることが示唆されたそうだ。

 

コケは地球上の多くの過酷な環境に耐えることが知られており、また砂漠に生息するコケの一種であるシントリキア・カニネルビス(Syntrichia caninervis)が地球上の実験で、火星のような環境に耐えられることを科学者らは発見しているという。

 

しかし藤田教授は、今回の実験について、宇宙曝露下での生存のみに焦点を当てていると指摘。「重力レベル、大気の組成、放射線レベルなど、地球外の様々な条件下でコケが発芽し、成長できるかどうかは、依然として未解明の問題です」と述べている。(了)

 

出典元:The Guardian:Moss in space: spores survive nine-month ride on outside of ISS(11/20)

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