1200年前のボードゲーム!可愛らしいガラス細工が発見される
約1200年前のものと考えられる”ボードゲーム”の一部であるガラス細工が新たに発見され、注目を集めている。
チョコレート大の愛らしいガラス細工
約1200年前のものとみられ、ボードゲームの一部であると考えられるガラス細工が発見されたのは、英国ノーサンバーランド州に位置する小さな島、リンディスファーン島。発掘作業の過程で発見されたという。
ガラス細工は直径約2センチほどのサイズ感といい、その丸みを帯びた形状といい、ちょうどチョコレートのように見える。
美しい透明感のある水色と白のガラスで出来ており、さらにその頂部は白い滴型のガラスによる装飾に彩られ、非常に愛らしい。
ヴァイキングの時代に作られる
しかしその愛らしい見た目とは裏腹に、このガラス細工が作成された時代背景は波乱に満ちたものだ。
これが発見されたリンディスファーン島は、リンディスファーン修道院と呼ばれる、イングランド北部へのキリスト教布教の中心となった修道院を擁することで知られる。
このリンディスファーン修道院は、8世紀初頭に豪華な装飾で目を惹く『リンディスファーンの福音書』が作られたことでも有名だ。
しかし793年、リンディスファーン島はヴァイキング襲撃の憂き目を見ることに。
この後英国は、300年近くにも及びヴァイキングによる破壊と占領の暗黒時代を歩むこととなる。
一方、ガラス細工が作成されたと考えられるのは、英国がそんなヴァイキングの侵略に侵されていた時代だ。
クラウドファンディングによる考古学プロジェクト団体「DigVentures」と共に、今回のガラス細工発見に至る調査を率いた考古学者でダラム大学の上級講師David Petts氏によると、これが作成されたと考えられるのは8世紀から9世紀頃であるといい、ちょうどヴァイキングによる侵略の時代と重なっている。
この発見についてPetts氏は、「これは当時の修道院における生活について非常に特別な本質を示してくれる、本当に素晴らしい発見だ」とする。
どのようにして用いられたのか?
それではこのガラス細工は、ヴァイキング侵略の時代にあって一体どのような経緯で作成され、どのように用いられていたのだろうか。
DigVenturesのMaiya Pina-Dacier氏によると、ガラス細工を彩る白いしずく型の装飾は、これが“キング”の駒であることを示しているという。さらにこの駒が用いられたのは、“ludus latrunculorum”と呼ばれるゲームであったとしている。
“ludus latrunculorum”とは古代ローマに起源を持つボードゲームであり、その侵攻に伴い各地へと広がっていった。そしてそれぞれの地域で異なる発展を遂げていったが、中央の“キング”を攻撃者から守るというのがいずれにおいてもゲームの基本となっているという。
一方Pina-Dacier氏は、今回発見されたガラス細工はヴァイキングの侵攻以前、リンディスファーン島に住んでいたか、リンディスファーン修道院を訪れていた当時の王族のものである可能性が考えられるとしている。
その理由としては、当時のゲームボードの駒は通常木か骨で作られることが多かったためだ。
これについてはPetts氏も、ガラス細工が単なる古いゲームの一部に留まらず、リンディスファーン島に住んでいた誰かが“上流階級の暮らし”をしていたことを示すものだと伝えている。
さらにPetts氏はガラス細工が文化的遺物としても非常に価値のあるものであることを強調し、「単なる墓地や来世というよりも、我々は修道院にいた人々の実際の暮らしについての洞察を得始めている」としている。
愛らしい見た目で目を惹く、今回発見されたガラス細工。1200年前当時の人々が、一体どのようにしてこの駒を用いてボードゲームを行っていたのかが気になるところだ。(了)
出典:The Guardian:Board-game piece from period of first Viking raid found on Lindisfarne (2/6)
出典:Livescience.com:1,200-year-old ‘gumdrop’ might have belonged to elite gamer at UK monastery(2/7)