独で悪質なネット投稿に対し削除を義務付け、違反したSNS企業に罰金64億円
ドイツ連邦議会下院で30日、新たな法律が可決され、今後ソーシャルメディア企業が悪質な投稿を早急に削除することが義務付けられる見通しとなった。
●悪質な投稿は24時間以内に削除
その法律によれば、ツイッターやフェイスブックなどの企業は、ドイツの法律に明らかに違反している投稿やフェイクニュースなどを、ユーザーによる報告を受けてから24時間以内に削除しなければならないという。
また判断するのが難しい攻撃的なコンテンツにおいても、利用者から意見や報告が寄せられてから7日以内に取り除くことが求められるそうだ。
そしてもし企業が組織的に新しい法律に従うことができなかった場合、5000万ユーロ(64億円)の重い罰金が科せられると政府が強調しているとか。
●ヘイトスピーチは言論の自由に含まれない
ドイツでは2015年に約100万人の難民を受け入れて以来、ネット上では扇動的で人種差別的な発言が増えていたという。
しかしナチス時代のホロコーストの否定や憎悪の扇動、人種差別的かつ反ユダヤ主義的な発言はドイツ国内では違法とされている。
その結果、今回の法律が作られたと見られているが、批評家たちの中には、高額の罰金を科すことでツイッターやフェイスブックなどの巨大企業が過度な投稿の削除や、検閲を助長させることにつながり、言論の自由を抑圧させかねないと警告する者もいるそうだ。
またこの法律が政府というよりも、むしろソーシャルネットワーク側に、コンテンツが法律に沿っているかを決定させる力を与えかねないと、主張する批評家もいるとか。
しかしこれらの批判に対し、法務大臣のHeiko Maas氏は次のように語っている。
「言論の自由は、犯罪的な法律が作られ始めた時に終わりを迎えます。死の脅迫や侮蔑、憎悪の扇動は、表現の自由の一部ではありません。それらは他の人の自由な意見に対する攻撃です。それらは他人を黙らせ、臆病にさせることを目的としているのです」
●政治の圧力なしに企業が動かない?
またこの法律が生まれた背景には、企業側の努力に対する懐疑的な見方もあるようだ。
実際、2015年の報告ではツイッター社が、ユーザーから反ヘイトスピーチ法に違反すると報告を受けた投稿のうち、1%しか削除していなかったという。
またGoogleのYouTube動画は90%近く排除していたものの、フェイスブックも39%しか削除を行っていなかったそうだ。
Maas法務大臣は次のように述べている。
「オンラインのプラットフォームは、適切な行動をとり続けてはいません。私たちの経験では、政治からのプレッシャーがなければ不幸にも、彼らがわずかも動かないことを示しています」
今回の法律は上院での通過を経て、10月にも施行される見通しだが、それでもプロバイダーがコンテンツを違法かどうか決定し、政府の業務を委託することに関して、反対の意見も根強いようだ。(了)
出展元:The Local:Germany imposes €50 million fines on social media firms that don’t delete hate speech(6/30)