トランプ政権、国連総会を前にパレスチナ自治政府の関係者のビザを取り消す

アメリカのトランプ政権は、来月ニューヨークで開催される国連総会を前に、パレスチナ自治政府などの関係者のビザ発行を取り消した。
「法律を武器とした戦争を仕掛けている」
アメリカの国務省は8月29日、ニューヨークの国連本部で開催される国連総会を前に、パレスチナ自治政府(PA)とパレスチナ解放機構(PLO)の関係者のビザを取り消した。
国務省は、パレスチナ自治政府が国際司法裁判所(ICJ)と国際刑事裁判所(ICC)への上訴や、各国にパレスチナ国家の承認を求めるなど、「法律を武器とした戦争(lawfare)」を展開していると批判。
その上で声明において、これらの行動は「ハマスによる人質解放の拒否、そしてガザ停戦交渉の決裂に大きく寄与した」と述べた。
国務省はまだ、ビザを取り消された関係者の氏名は明らかにしておらず、パレスチナ自治政府の国連常駐代表部関係者はビザの発給を受けられるが、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長やその他80人の政府高官が国連総会に出席できない、と考えられている。
トランプ政権がICCの判事らに制裁措置
アメリカ政府は、イスラエルに関するICJとICCの最近の判決を繰り返し非難しており、トランプ政権はここ数カ月、ICCの判事と検察官に対して一連の制裁措置を講じている。
国際司法裁判所(ICJ)は昨年、イスラエルのパレスチナ占領地における駐留は違法であり、可能な限り速やかに撤退すべきだとの判決を下した。
また国際刑事裁判所(ICC)は昨年11月、イスラエルのネタニヤフ首相とヨアブ・ガラント前国防相に対し、ガザ地区での戦争犯罪の容疑で逮捕状を発行した。
1947年に国連が設立され、本部がニューヨークに置かれた際、アメリカの移民政策により、公務で国連に渡航する人々には影響を与えないことが合意されたという。
しかし1988年、当時のパレスチナ解放機構(PLO)のヤセル・アラファト議長は、国連の公務でニューヨークを訪れる際、ビザの発給を拒否されている。
また興味深いことに、2013年にはスーダンのオマル・アル・バシル大統領のビザも拒否された。その理由は、国際刑事裁判所(ICC)から指名手配を受けていたためだ。
イスラエルのネタニヤフ首相も国際刑事裁判所から指名手配を受けているが、来月ニューヨークを訪れる予定となっている。
EUやスペインなど各国が批判
アメリカ国務省の発表を受け、パレスチナ自治政府のアッバス議長の事務所は、アメリカ政府に対し、ビザ取り消しの決定を撤回するよう強く求めた。
またEUの外相らも、デンマークの首都コペンハーゲンで、ガザ紛争について協議するため開かれた閣僚会合で、アメリカ政府のビザの取り消しについて議論。ニューヨークで開催される国連総会へのパレスチナ代表団の参加を認めないという決定を再考するよう、アメリカ政府に求めたという。
スペインのペドロ・サンチェス首相も、アメリカ政府がパレスチナ代表団へのビザ発給拒否を決定したことについて、「不当」だと発言。「パレスチナには国連やあらゆる国際フォーラムで声を上げる権利がある」とし、スペインの確固たる支持を表明するため、パレスチナ自治政府のアッバス議長と会談したと明らかにした。
ベルギーのMaxime Prevot外相も、パレスチナ人代表のビザ発給拒否というアメリカ政府の措置を「深く遺憾」であり「民主主義への打撃」だと批判。
Prevot外相は「X」への投稿で、「二国家解決に向けた新たな機運が高まり、具体的なコミットメントがなされ、国際的な支持が高まっている今、パレスチナ人の声を阻むことは不当であるだけでなく、逆効果だ」と述べた。
フーシ派の首相がイスラエルの攻撃で死亡
イエメンの「フーシ派」は8月30日に声明を発表し、8月28日のイスラエル軍の攻撃により、「フーシ派」の首相であるAhmed Ghaleb al-Rahawi氏と閣僚が死亡したと明らかにした。
Rahawi氏は当時、首都サナアで定例会議中にイスラエル軍の攻撃を受け、閣僚数名とともに死亡したという。
またガザ地区北部のガザ市では8月30日にも、イスラエル軍による激しい空爆が行われ、全域で少なくとも50人のパレスチナ人が殺害された。(了)
出典元:Aljazeera:LIVE: Israel presses Gaza City seizure, UN warns 1mn could be displaced(8/29)
出典元:Aljazeera:Live: 50 Palestinians killed as Israeli attacks on Gaza City intensify(8/30)