海岸に打ち上げられたクジラの大量死は、太陽フレアが原因か?新たな仮説が登場
これまでクジラなどが大量に海岸に漂着し、死んでしまう出来事が繰り返されてきたが、この原因が「太陽フレア」の影響とする仮説が発表された。
クジラの大量死の原因を示す新仮説
この調査研究を行ったのはドイツのKiel大学、Klaus Vanselow博士が率いる研究チームとされている。
彼らは2016年の初め頃、北海の浅瀬に29頭のマッコウクジラが打ち上げられ死んだ出来事に着目。
その原因が「太陽フレア」の増加である可能性が高いと指摘し、先日「International Journal of Astrobiology(宇宙生物学)」において発表した。
2nd Hunstanton whale stranding #whale #spermwhale #HunstantonWhale pic.twitter.com/OxbS83MJB5
— G.O.N.E (@GONE_EXTINCT) February 6, 2016
地球の磁場を乱す「太陽フレア」
「太陽フレア(火炎)」とは太陽で起きている爆発現象のことで、同時に電波やX線のほかに、電子や陽子などの電気をおびた素粒子が噴出するという。
それらは時折、地球に接近して突然の磁気嵐を起こし、地球の磁場を乱し、同時にオーロラの活動を活発にさせると言われている。
そしてクジラなどは地球の磁場を利用して海の中を移動すると考えられているが、「太陽フレア」のランダムかつ急激な活動で引き起こされた磁場の乱れにより、方向感覚を喪失する可能性があるとしている。
高緯度での磁場の乱れに適応できない
そもそも開けた海では、クジラなどの動物たちは間違った方向へ進んでいると気づくと、より信頼できるナビゲートシステムに切り替えられるそうだ。
そして多くのクジラなどが大西洋の東部、ポルトガル沖合のアゾレス諸島付近にある、暖かくて深い海の中で育つという。
その後、若いオスは10歳から15歳になると、大量のイカに惹きつけられて北極を目指し北上。しかし若いクジラは、「太陽フレア」の影響を受けやすい高緯度での磁場の乱れに適応する方法を学んでいない。
この経験不足によって方向を見失い、迷いがちになると考えられるそうだ。
この見方は、クジラなどが幼い頃に緯度の低い地域で過ごすという事実によっても裏付けられており、実際に緯度の低い地域は「太陽フレア」による磁場の乱れは少ないという。
研究者らは「未経験のクジラは、それゆえにノルウェー海の南部で迷子になったのかもしれません。そして北海の浅瀬に打ち上げられたのです」と語っている。
Ashore at Norfolk
Countless fathoms did I swim
To expire like this#HunstantonWhale pic.twitter.com/p6kchj9Rb4— Kit Harrison (@kitharrison) February 4, 2016
調査対象のクジラも若く独身だった
今回対象となった29頭のマッコウクジラは、2015年の12月から2016年2月の初旬にかけて、イギリスやオランダ、ドイツの沿岸に打ち上げられたとされ、その多くが若い独身だったそうだ。
そして研究者はこのようなクジラの漂着が、同じ期間内に記録された「太陽フレア」による磁気嵐によって引き起こされた可能性があるとしている。(了)
出典元:INDEPENDENT:Northern Lights linked to deaths of whales stranded on North Sea beaches(9/6)