47年前に発見された化石、ジュラ紀の混乱する海洋を生きた新種の首長竜と判明

1978年に発見され、博物館で番号を振られて保存されていた化石が、新種の“首長竜”であることが判明した。
その名は「Plesionectes longicollum(プレシオネクテス・ロンギコルム)」。約1億8300万年前、地球規模の環境変動が起きていた“海洋の混乱期”に生きていた種だという。
47年前に発見された化石
その化石が発見されたのは、ドイツ・ホルツマーデン南西部にある「ポシドニア頁岩(Posidonia Shale)」。保存状態の良い化石が見つかる場所として有名な化石層だ。

1978年、研究者のGotthilf Fischer氏によって完全な骨格と軟組織の痕跡を含む化石として発見。翌年にシュトゥットガルト州立自然史博物館(SMNS)に収蔵され、「SMNS 51945」という番号で管理されてきた。
今までも複数の研究の対象に
この化石が研究の対象となったのは、今回が初めてではない。海に棲む首の長いプレシオサウルス類の一種であることはわかっていたが、2006年に新種の可能性が指摘され、2017年の研究で「同地域の同時代のプレシオサウルス類標本とは大きく異なる」との結論が出ていた。
しかし、この標本が幼体なのか成体なのかが不明なこと、頭骨の保存状態が悪いことから新種とは断定されず、「未定のプレシオサウルス類」とされていた。
海洋の混乱期に生きた首長竜
今回の研究によって、首の椎骨が43個以上と非常に長く、他の同時代の種とは異なる特徴を持ち、骨の成長状態や肋骨の構造などから、成長段階に左右されない独自性が認められた。
研究チームは、この化石を約1億8300万年前のジュラ紀前期に生息していた新種と結論。Plesionectes longicollum(プレシオネクテス・ロンギコルム)と名付けた。
ホルツマーデン地域で発見されたプレシオサウルス類としては最古の標本であり、この時代は、海洋の酸素濃度が極端に低下する「海洋無酸素事変(Oceanic Anoxic Event)」が発生していた時期。この個体は、酸素が乏しく生物にとって過酷な環境の中で生き延びていたことになる。

ポシドニア頁岩からはこれまでに5種のプレシオサウルスが発見されており、今回の発見はその多様性をさらに広げるものだ。
研究を主導したスヴェン・ザックス氏(ビーレフェルト自然史博物館)は、「これまでの研究ではこの標本の独自性が十分に評価されていなかった」と語る。この発見は、ジュラ紀初期の海洋生態系の再構築に新たな視点を与えると期待されている。
この化石は、今後もシュトゥットガルト州立自然史博物館に収蔵され、研究と展示の対象となる予定だ。(了)
出典:PeerJ「An unusual early-diverging plesiosauroid from the Lower Jurassic Posidonia Shale of Holzmaden, Germany」(8/4)