陸上の恐竜と思われてきたスピノサウルス、水中を泳いでいた可能性:デトロイト・マーシー大学
これまで主に陸上で生活していたと思われてきた巨大な肉食恐竜、スピノサウルス。そのイメージを大きく覆す研究結果が明らかにされた。
その内容は4月29日に科学誌「nature」や「NATIONAL GEOGRAPHIC」などで発表された。
水中での推進力を得る証拠がなかった
今回、研究を行ったのは、「National Geographic Explorer」のメンバーで、アメリカのデトロイト・マーシー大学の古生物学者・Nizar Ibrahim博士が率いる国際研究チームだ。
彼らは2008年に、モロッコのサハラ砂漠地帯にある地域、Kem Kemで白亜紀に生息していたスピノサウルスの仲間「Spinosaurus aegyptiacus」の化石の一部を発見。それを分析した結果、この恐竜が両生類のようなライフスタイルに適応し、魚を食べていたことが確認されたという。
またこのことは比較的短い後ろ足や横に広がった足、濃い骨密度、円錐型の歯がちりばめられた細長い顎からも推測されたそうだ。
しかし本当に水中に住んでいた恐竜なのか、という点になると、反対意見も現れたとか。その理由として、巨大な恐竜が水中を移動するのに必要とされる推進力を得るための構造に関する証拠が、化石にはほとんどなかったからだ。
「多くの時間を水の中で過ごしていた」
このため研究チームは再び、モロッコの発掘現場へ戻り、調査。2015年から2019年にかけて、広範な側方移動ができるヒレのような尻尾の完全な化石や、非常に長い脊椎の骨を特徴とする多くの骨の化石を回収した。
そしてあらゆる化石の準備を整えた後、研究チームは尻尾の解剖学的構造をデジタルでとらえるために写真測量を使用。それを元に尻尾のパフォーマンスを精査するため、ハーバード大学の研究チームが柔軟に動くモデルを制作し、そこに泳ぐ動きを真似るロボットシステムを取り付けたという。
その後、研究者らはスピノサウルスの泳ぐ能力と、ワニやイモリ、他の恐竜とを比較。その結果、スピノサウルスが水の中に住み、尻尾で推進力を得る、「川のモンスター」であるという考えと一致した。
研究を率いたIbrahim博士は次のように語っている。
「恐らくこの恐竜は、ただ泳いでくる魚を待ちながら浅瀬で立っていたのではなく、水の中で積極的に獲物を追っていたのでしょう。恐らく一生の多くの時間を水の中で過ごしていたのでしょう」
この発見は、スピノサウルスの仲間によって水生生物が執拗に、広範囲に襲われていた可能性を示しているという。(了)
出典元: University of Detroit Mercy:New fossils rewrite the story of dinosaur evolution and ecology — and change the appearance of Spinosaurus(4/29)
出典元:EurekAlert!:New fossils rewrite the story of dinosaur evolution and ecology — and change the appearance of Spinosaurus(4/29)