米・国務省がイスラエルの責任を回避させるため報告書を改ざんか、元高官が告発
アメリカの国務省が報告書を勝手に書き換えたとして、元高官が非難の声を上げている。
「イスラエルが人道支援を阻止していない」
その元高官とは、国務省人口・難民・移民局の上級顧問だったステイシー・ギルバート氏だ。
彼女は国務省の専門家の1人で、5月10日に公表された、国家安全保障覚書20(NSM-20)に基づくイスラエルに関する報告書の作成に関与していたという。
その報告書では、イスラエルがアメリカの兵器を国際人道法に「反する」方法で使用したと「評価するのは合理的」だが、特定の兵器を違反と結び付ける具体的な証拠は十分ではないと結論付けた。
そして問題となったのは、「イスラエル政府が、ガザ地区におけるアメリカの人道支援の輸送または提供を、禁止または制限していると、国務省は現在評価していない」と書かれていたことだ。
報告書の結論が、多くの意見に反していた
実はアメリカの対外援助法では、「人道支援の輸送を妨害したことが判明した国への、武器の販売と安全保障支援を削減する義務がある」と定められているという。
国務省で20年間勤務し、5月28日に職を辞したギルバート氏は、「イスラエルが支援を妨げていない」とする報告書の結論が、相談を受けた多くの専門家の見解に反しており、国務省が専門家の意見を無視し、報告書を偽造したと訴えている。
ギルバート氏によれば、ガザ地区への支援の流れを妨げている他の要因(戦闘や治安の欠如など)があるものの、イスラエルがガザ地区に流入する食糧や医薬品の量を制限する役割を果たしていることは明らかだ、との合意が得られていたという。その上で、彼女は次のように主張している。
「これ(イスラエルが支援を制限していること)は間違いなく、国務省の人道問題専門家の意見であり、私の部署だけではなく、この問題に目を向けている諜報機関や他の部署の人たちの意見です。むしろ、イスラエルが人道支援を阻止していないと、主張している人を思い浮かべるのが、難しいくらいです。だからこそ、イスラエルが人道支援を阻止していないと主張している報告書に反対します。これは明らかに誤りです」
4月末に報告書作成から外される
ギルバート氏は報告書の作成にあたり、相談を受けた専門家の1人だったが、4月末頃には、報告書作成の任から外され、より高位のレベルで編集されると告げられたという。
そのため彼女は、報告書が発表されるまで内容は知らず、5月10日に発表された時、報告書に「イスラエルが人道支援を阻止していない」とはっきり書かれていたことが、信じられなかったそうだ。
その後、ギルバート氏は報告書を作成したチームにメールを送り、この報告書の発表を受けて、辞任すると伝えたという。(了)
出典元:The Guardian:US state department falsified report absolving Israel on Gaza aid – ex-official(5/30)