気候変動の影響により、有害な真菌による感染リスクが高まる可能性

気候変動により、今後数年間で有害な真菌(酵母、カビ、キノコなど)による病気のリスクが増える可能性があるとする、研究結果が発表された。
ヒトや動物、植物に影響を与える可能性
この研究論文はまだ査読前で、「リサーチ・スクエア」に掲載されたが、それによれば研究者たちは、2100年までの異なる気候シナリオにおいて、気温上昇により感染症を引き起こす3種類の真菌の分布を調べたという。
この3種類の真菌とは、「アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)」、「アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)」、「アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)」だ。
温暖・湿潤な気候で繁殖する真菌の「アスペルギルス」は、すでにアメリカを含む世界中で確認されており、ヒトや動物、家畜、植物に影響を与える可能性があると言われている。
15年以内に拡大する恐れ
研究論文によれば、現在のまま進行すると、15年以内に真菌性の病原体がヨーロッパなどで「大幅に拡大」する可能性があることが示唆されたという。
研究における気候変動のシナリオでは、「アスペルギルス・フラバス」の蔓延は16%増加し、ヨーロッパでさらに100万人が感染リスクにさらされる可能性があるそうだ。
また「アスペルギルス・フミガツス」は、肺に感染し、致死的な感染症を引き起こす病原体だが、研究によればこの真菌が77.5%増加し、ヨーロッパで900万人が感染する可能性があるという。
環境の変化が真菌の適応と拡散を促す
そもそも空気中を運ばれた真菌の胞子は、特に脆弱な集団や免疫力が低下した人、肺疾患のある人に吸入されると感染症を引き起こす可能性があると言われている。
また真菌は「驚くほど適応力の高い生物」であり、新しい地域に定着し、環境の変化に耐えることができるそうだ。
この研究論文の筆頭著者で、イギリス・マンチェスター大学生物科学部の教授である、ノーマン・ファン・ライン氏は、「湿度や異常気象といった環境要因の変化は、生息地を変え、真菌の適応と拡散を促すだろう」と述べている。
真菌の拡散は、農業で殺菌剤が使用されたことから生じた、耐性を持つ真菌の増加と、真菌感染症の治療法の「深刻な不足」により、特に懸念されているという。
また真菌はウイルスや寄生虫に比べて研究が比較的遅れており、最大380万種のうち、記録されているのはわずか10%未満しかないそうだ。
ファン・ライン教授は「真菌病原体に対する意識を高め、効果的な介入策を開発することが、この影響を軽減するために不可欠となるだろう」と述べている。(了)
出典元:ABC News:Climate change leads to spread of infection-causing fungi, scientists say(6/14)