パリ・アムステルダム間が僅か90分!欧州でのハイパーループ計画が明らかに
2013年、イーロン・マスク氏により提唱された真空チューブによる超高速鉄道、ハイパーループ構想。
これを巡っては様々な課題も浮上する一方、既に実現に向けた動きも進み始めている。
そのような中、ハイパーループによりオランダ・アムステルダムとフランス・パリを90分で結ぶ計画が明らかになり、注目を集めている。
アムステルダム・オランダ間が90分、早ければ2028年にも
オランダ・アムステルダムとフランス・パリ間を90分で結ぶハイパーループの建設を計画するのは、オランダのベンチャー企業「Hardt Hyperloop」だ。
ハイパーループとは、乗客を乗せた滑らかな流線型のカプセルがスチール製の真空チューブを時速965キロ(600マイル)を超える速度で進むという、米国の実業家イーロン・マスク氏により提唱された超高速鉄道構想だ。
もしこれが実現すれば、飛行機よりも持続可能性が高く現存する高速鉄道よりも格段に早いとして、各国間やさらには大陸間をも結ぶ未来の鉄道になると期待されている。
Hardt Hyperloopによると、アムステルダムとパリを結ぶハイパーループは2028年にも実現する可能性があるという。
また実現の際には1方向につき1時間当たり20万人もの乗客を輸送することが可能であり、アムステルダム・パリ間を結ぶのにかかる時間も90分ほどに抑えられるとしている。
尚、現状では90分という時間は飛行機の直行便で移動するのにかかる時間と同程度。鉄道でアムステルダム・パリ間を移動するとなると、この倍以上の時間がかかるという。
これについてHardt Hyperloopは、代表者を通じて「それを非常にユニークなものとさせているのは、収容可能力の高さと低いエネルギー消費、そして確かに旅行時間を大きく短縮させる速度の速さだ」とコメントしている。
欧州を結ぶハイパーループ網が経済的利益もたらす?
この計画が持ち上がった背景にはHardt Hyperloopとオランダ西部の州、北ホラント州が共同で行った研究が存在する。
この研究によると、欧州を広く結ぶハイパーループ網は欧州各都市間を通勤する際にかかる時間を著しく短縮すると共に、国境をより曖昧にさせ”素晴らしい経済的利益”をもたらす可能性があるという。
さらにオランダの首都アムステルダムを擁する北ホラント州にとっても、ハイパーループによりアムステルダムの大都市圏と欧州各国の主要都市との交通の便がより向上すれば、ビジネスにおける出張も強化され、”州の経済的価値を強固にする”とのことだ。
またHardt Hyperloopはアムステルダム・パリ間のみならず、日々の通勤や旅行に変化をもたらす潜在性を有する5つの主要ルートに注力しているという。
そのルートにはフローニンゲンとデン・ハーグというオランダ国内の都市とアムステルダムを結ぶルート、さらにはアムステルダムとドイツの都市デュッセルドルフとフランクフルトの2都市を結ぶルートが含まれるとされる。
実現可能性には疑問の声も
一方、この実現可能性には疑問の声も上がっている。
中でも焦点となるのが、ハイパーループがあらゆる年代の人にとって果たして本当に移動手段として適切であるのかどうか、さらには緊急事態が発生した際にどのようにして避難するのか、ということだ。
また技術面でも100キロ以上に及ぶ膨大な長さの真空チューブを建設することの困難さや、温度変化によってチューブが膨張する可能性、さらには減圧により大事故が発生する可能性など、様々なリスクが考えられる。
さらにハイパーループの実現に向けては巨額の投資が必要となる上、政府をも味方に付ける必要がある。
しかしこれについて北ホラント州のJereon Olthof氏は、Hardt Hyperloopと同州の共同で行われた研究の結果は興味深いものであり、ハイパーループによる恩恵には”非常に期待出来る”とコメント。
その上で「それがこの研究を進展させるため、他の機関と共に議論を行おうとしている理由だ」としている。
今回明らかとなったオランダと欧州の主要都市をハイパーループで結ぶというHardt Hyperloopの計画。
ハイパーループ実現のための技術的な問題に加え、コロナ禍も収束せぬ中、この計画がどのような帰結を迎えることになるのか注視したいところだ。(了)
出典:INSIDER:A new Hyperloop train network could take you from Paris to Amsterdam in just 90 minutes(4/30)
出典:CNN:Dutch Hyperloop plan eyes Paris to Amsterdam in 90 minutes(4/16)
出典:Wired:ハイパーループの実現は困難? 科学者たちが語る、これだけの危険性(2018/11/16)