地球を守るため、NASAが宇宙機を小惑星に衝突させる
万一、小惑星が地球と衝突するコースでやって来たとき、先にロボット宇宙船(DART:探査機)を衝突させてコースを逸らそうと、NASA(アメリカ航空宇宙局)は考えている。そのための実験が、今月末に実施される予定だ。シミュレーションではなく、実際に宇宙機を小惑星にぶつける。
小惑星の衝突はあり得る
「過去に小惑星が地球に衝突したことを、我々は知っています。衝突は自然な出来事で、将来も起こるでしょう。そのとき、最悪の事態を避けたいのです」
こう話すのは、DARTと名付けられた今回のNASAのプロジェクトを推進するクィーンズ大学ベルファストのAlan Fitzsimmons教授だ。
小惑星衝突の有名な例は、660万年前に起こったもので、10kmの大きさの小惑星が今のメキシコのユカタン半島に落ちた。そのときに原子爆弾数十億個分のエネルギーが発生し、恐竜を含めた地球上の動植物の75%が破壊されたという。そんな惨事を避けるために、宇宙機を小惑星にぶつけてコースを逸らすというアイディアが生まれたのだが……
「ただ問題があって、そうするための技術を、一度もテストしていないのです。DARTプロジェクトの目的は、それをテストすることなのです」とFitzsimmons教授。
小惑星「ディモルフォス」が標的
DARTプロジェクトでロボット宇宙船を衝突させる標的となるのは、地球近傍小惑星の1つである「ディモルフォス」だ。
この「ディモルフォス」は、「ディディモス」という小惑星の周囲を回る衛星でもあり、2つは二重小惑星となっている。
今回の実験では、ロボット宇宙船を衝突させた後の「ディモルフォス」が、シミュレーション通りに軌道を変えるかどうかが焦点になる。
「人間の歴史の中で、小惑星の衝突による大きな被害がまだ出ていないのは、大変幸運なことです。しかし、いつかそれが起こることを認識しておかなければなりません。そして、その対策も講じておかなければなりません」と、イギリス・地球近傍天体インフォメーションセンター(National Near Earth Objects Information Centre)のJay Tate所長は言う。
昨年11月に打ち上げられた「DART」は、イギリス夏時間の9月27日未明にターゲットに衝突する予定だと言われている。(了)
出典元:The Guardian:Nasa to crash $330m spacecraft into asteroid to see if impact can alter course(9/3)
出典元:DART