人間の脳組織をマウスに移植、脳損傷の治療に期待
人間の脳組織の一部を、マウスに埋め込む実験が行われ、今後新しい治療法への道を開く可能性が出てきたという。
マウスの脳と一体化する
この研究を行ったのは、アメリカ・ペンシルべニア大学の医師で脳神経外科の助教(assistant professor)である、Isaac Chen氏率いる研究チームだ。
彼らはまず、人間の脳のオルガノイド(ゴマ粒大の神経細胞の塊)を、直径約1.5mmになるまで、シャーレの中で成長させたという。(オルガノイドとは、3次元的に作られた臓器の名称)
そして、その組織を、視覚野が損傷した成体マウスの脳に移植。その結果、移植されたオルガノイドは3カ月以内にマウスの脳と一体化したそうだ。
しかも血液も供給されるようになり、オルガノイドの体積も当初の数倍に膨張して、マウスの神経細胞と連動する突起を伸ばすようになったという。
脳が自己再構築に利用できる
もっとも研究者らは、この移植により、マウスの視覚機能が向上したかどうかは評価していない。
ただ実験では、マウスが点滅する光にさらされると、ヒト神経細胞が電気信号を発したことが示されたという。
Chen氏は、脳がそれを吸収して、損傷後の自己再構築に利用できるという考えを裏付けるものだとし、次のように述べている。
「この人工処理ユニットを、損傷した脳の特定部位に合理的に導入することで、その部位の計算能力が向上し、神経機能を回復させるために必要な脳内ネットワークが十分に回復すると考えられます」
脳卒中や脳の損傷の治療にも期待
研究チームによれば、将来的には、研究室で患者自身の細胞から脳組織の塊を培養し、脳卒中や外傷による脳の損傷を修復するために、使用できるようになるかもしれないという。
ただしChen氏は、臨床応用は少なくとも5年から10年先だろうと予想しており、「私たちは、まさにこの旅の始まりにいるのです」と述べている。(了)
出典元:The Guardian:Blobs of human brain planted in rats offer new treatment hope(2/3)