北センチネル島で殺害された宣教師、遺体回収に向けインド警察が動くも困難に直面
先日インドの秘境、北センチネル島を訪れ殺害された米国人宣教師のニュースは、当サイトでもお伝えさせていただいた。
一方、殺害された米国人宣教師の遺体回収に向け、インド警察が動き出そうとしている。
事件の概要とは
事件の発生は今月17日。犠牲になった米国人宣教師は、カナダのバンクーバーに在住していたというJohn Allen Chauさん(26)だ。
Chauさんはインド領アンダマン諸島に位置する北センチネル島の先住民に、キリスト教の宣教をするため同島への渡航を計画。
「神はあなたたちを愛している」などと叫び、先住民との接触を試みるも、先住民が放った矢により殺害された。(注:他の手段で殺害されたとの報道もある)
Chauさんの島への渡航を手助けした漁師らによると、Chauさんの遺体は先住民らが海岸に埋めたという。
また北センチネル島への渡航にあたっては、7人の漁師らがChauさんから金銭を受け取り渡航の手助けをしたとして、逮捕されている。
北センチネル島とその先住民とは?
しかしなぜChauさんは殺害されてしまったのか。
北センチネル島に住む“センチネル族”という民族は、周辺の島の民族ですら理解できない独自の言語を話し、その数50~400人程度と考えられている。
一方これまで外部との接触を頑なに拒む姿勢を取っており、外部から近づこうとする者があれば弓矢による攻撃などを仕掛けることで知られ、過去にもそれにより命を落とすこととなった人が複数いる。
そのためインドでは、法律で北センチネル島の数キロ以内に近づくことは禁止されている。
なぜ外部との接触を拒むのか
しかし彼らが外部との接触を頑なに拒むのには、合理的な理由が存在する。
これについて先住民族らの権利を守るため活動する非営利組織である「サバイバル・インターナショナル(Survival International)」のStephen Corry氏はコメント。
Corry氏いわく、「インフルエンザやはしかなどといった外界からの病気の致命的な流行のリスクは非常に現実的であり、そのようなリスクは接触によって増加する」とのこと。
長きにわたり外部との接触を拒み続けてきたことにより、センチネル族はインフルエンザやはしかといったごく一般的な病気に対する免疫すら全く持たない可能性が高く、外部との接触は病気のリスクに直結してしまう。
そのためセンチネル族は武装し、外部の接触をより拒むようになってしまったというわけだ。
遺体回収に向け印の警察が動くも…
一方、事件の発生後、インド警察はChauさんの遺体回収に向け、動こうとしている。
しかし24日、インド警察がボートに乗り北センチネル島の海岸から約400メートルほどの地点まで接近したところ、先住民が弓と矢により武装しているのを確認。
あえなく引き返すこととなったという。
またこの時の状況についてインド警察のDependra Pathak 氏は、先住民らが“じっと見てきた”としている。
さらに遺体回収についてはサバイバル・インターナショナルも、インド警察と先住民の双方にとって“非常に危険”であるとして、警鐘を鳴らしている。
尚この事件についてChauさんの家族は、声明においてChauさんの死に責任を持つ人々を許す、とコメントしている。
一人の将来ある若者の命が奪われることとなってしまった今回の事件。
法を破った上、宗教的概念を共有しない民族、それどころかコミュニケーションの手段も持たない人々に対し、自らの価値観を押し付けるようなChauさんの行為は称賛できるものではないように思う。
しかしせめて遺体だけでも家族の元に返すことができれば、と願ってしまう。(了)
出典:USA TODAY:Police trying to recover body of American missionary killed by remote tribe turn back to avoid attack (11/26)
出典:BBC News:John Allen Chau: ‘Incredibly dangerous’ to retrieve body from North Sentinel(11/26)
出典:The Guardian:Sentinel Island: calls to leave body of American killed by tribespeople (11/27)
出典:Travel Note:北センチネル島は現在観光できる?危険な住民が住むその噂の真相は!