何故!?米が大使館をエルサレムに移転、パレスチナ人に多くの死傷者が続出


アメリカのトランプ政権は今月14日、在イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移転した。

 

昨年12月に、エルサレムをイスラエルの首都と認定したことを受けての今回の措置となったが、パレスチナ側は抵抗しており、多くの死傷者が出る事態となっている。

 

大使館移転に喜ぶイスラエル

 

イスラエルは移転記念式の前夜、13日に祝賀会を開催。そこには33ヶ国の大使が出席したという。日本からの参加は無かった。

 

そこで、イスラエルのネタニヤフ首相は出席した大使たちに対し、「あなたがたの大使館もエルサレムに移してほしい。」と呼びかけた。

 

14日の移転記念式にはトランプ大統領の娘イバンカ氏や、その夫ジャレッド・クシュナー大統領顧問などが出席した。トランプ大統領は出席を控えたが、ビデオ演説という形を取り、移転を計画より何年も前倒しにした、と自賛。

 

「エルサレムがイスラエルの首都なのは明白な現実」としつつ、「我々の偉大な望みは平和」と述べて、今後も中東和平の実現に関与する方針を示した。

 

 

反発するパレスチナに多数の死傷者が発生

 

これに対し、これまでイスラエルによる占領反対を訴え、パレスチナ難民の帰還を求める抗議活動を3月末から続けていたパレスチナ側は猛反発している。

 

14日にもアメリカ大使館移転抗議の為、イスラエルとの境界線沿いで大集会を行ったが、これにイスラエル軍が実弾を発砲。パレスチナ自治政府によると、55名が死亡、2700名が負傷したという。

 

 

同自治政府のマフムード・アッバス首相は「本日もまた、我が民に対する虐殺が続く」と、イスラエルを非難した。

 

2014年のガザ侵攻依頼、最悪の犠牲者数を出した今回の紛争は、1948年5月14日のイスラエル建国により約70万人のパレスチナ人が強制移住を余儀なくされた屈辱的な日と重なった。

 

彼らは翌15日を「ナクバ(アラビア語で大惨事の意)」と呼び、難民となった悲劇を思い起こす日としているが、中東のメディアは「70年経った今も『ナクバ』は終わっていなかった」と述べている。

 

 

国際社会からも非難の声が

 

イスラエルは、パレスチナ側が「暴力的な暴動」に参加した為にとった自衛行為だと主張している。

 

しかし、死亡した55名のうち、16歳以下の子供が8名おり、その中には8か月の赤ん坊も含まれていたという。イスラエル側に負傷者が出たという情報はない。

 

石や発火装置を投げて抵抗するパレスチナ人に、催涙ガスやスナイパーによる銃撃で応戦するイスラエルの行動に対しては、国際社会からも非難が出ている。

 

 

国連人権委員会は、今回のイスラエルの武力行為は「受け入れられない」とコメントした。

 

「境界フェンスに近づくという行動は致命的、また生命を脅かすものではない。なので、それに対し銃撃するというのは正当な理由にならない。」

 

フランスのマクロン大統領も、イスラエルの武力行使を非難。

 

トルコは、イスラエルと共にアメリカにも責任の一端があると非難し、抗議として両国から大使を召還すると表明した。

 

アメリカはハマスの責任だと主張

 

一方のアメリカは責任の全ては、抗議活動を主導しているイスラム原理主義組織ハマスにあると主張。アメリカ政府はハマスをテロ組織と指定している。

 

今回のアメリカ大使館の移転で、更に亀裂が深まったパレスチナ・イスラエル間の対立。

 

1948年、イスラエルはユダヤ人国家の建国を宣言する。その後勃発した第一次中東戦争で、西エルサレムを支配し、1967年の第三次中東戦争で東エルサレムを占領した。

 

特に東エルサレムにはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地があり、帰属性が争われている。パレスチナは、この東エルサレムを首都として建国することを目指している。

 

国連参加国の大半が、イスラエルによる東エルサレムの統治権を認めておらず、国際管理下に置くべきだと主張。しかし、イスラエルはこれを無視し、現在までこの地を実効支配している。

 

そんな中での、アメリカ大使館のエルサレムへの移転。「エルサレムの地位は、パレスチナとイスラエルの和平交渉で決める」としてきた従来の中東政策を大きく転換させ、アメリカ主導の中東和平交渉は今後、絶望的となった。

 

大使館移転に隠された政治的要因

 

多数の死傷者を出す混乱を生み、国際社会から非難されるのが必至にもかかわらず、何故アメリカは大使館を移転したのか。

 

それは今年11月に行われる中間選挙を見据えたトランプ政権の、国内の支持者向けアピールだと言われている。

 

2016年の大統領選挙の際、トランプ選挙事務所は、イスラエルを支持する実業家から2000万ドルの献金を受け取っていたことが明らかになっている。

 

この実業家とはユダヤ系アメリカ人のシェルドン・アデルドン氏。カジノ王とも言われる大富豪の同氏は、献金の見返りとして、エルサレムに大使館を移転するよう要求していた。

 

Sheldon Adelson with Netanyahou by SecessStory.com

 

また、大統領選挙でトランプ氏に投票したキリスト教福音派の人々の支持を、中間選挙まで繋ぎ止めたいという思惑もある。福音派は聖書の言葉を厳格に守ることを教えの柱としており、そこからエルサレムはユダヤ人国家が統治すべきだと考える人もいるためだ。

 

このように、政治的要因から行われた大使館移転。犠牲となるのは罪のない一般人だ。中東情勢が混迷を深め、新たな紛争が起きないか不安が募る。

 

物事の背景には何があるのか。一般のニュースではあまり伝えられない、裏にある真実を見極める知識と思考が、我々にも求められている。(了)

 

 

出典元:BBC:Gaza begins to bury its dead after deadliest day in years (5/15)

出典元:BBC:ガザ地区でイスラエル軍発砲、パレスチナ人55人死亡 米大使館移転抗議で (5/15)

出典元:Arab News:Israel’s killing of Palestinians a grim reminder that Nakba is not over (5/15)