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トランプ大統領の「エルサレム首都認定」に対する世界の反応とは?

トランプ大統領の「エルサレム首都認定」に対する世界の反応とは?
Twitter/Donald J. Trump

アメリカのトランプ大統領が、エルサレムをイスラエルの首都と認定したことに対し、世界各国から様々な反応が起こっている。

 

アラブやヨーロッパ、国連、当のイスラエルがどのような声をあげているのか、またそもそも大統領の今回の発言は、一体何が問題なのだろうか。

 

パレスチナの反応

 

今月6日、トランプ大統領はホワイトハウスにて演説し、公式にエルサレムをイスラエルの首都と認め、テルアビブにあるアメリカ大使館の移転手続きを進める考えを表明した。

Twitter/Donald J. Trump

この発言に、すぐに反応したのがパレスチナだ。マフムード・アッバス議長は「アメリカは、平和構築の仲介者としての役割を放棄した。これらの嘆かわしく受け入れがたい措置は、全ての平和への努力を意図的に損ねるものだ。」と批判。加えて、「エルサレムはパレスチナ国家の永遠の首都だ。」と言明した。

Twitter/Plaid Mahmoud Abbas

他のイスラム諸国からも批判の声

 

世界のイスラム諸国からも、相次いでトランプ大統領の発言を非難する声が上がっている。

 

トルコのエルドアン大統領は、トランプ大統領が首都移転を正式に表明する前日の5日、その可能性があると報じられた時点で、「エルサレムはムスリム(イスラム教徒)にとってのレッドラインだ。」と反発した。

 

そして、トランプ大統領の演説後、「トルコはイスラエルと国交断絶するかもしれない。」と警告した。

Twitter/Recep Tayyip Erdogan

サウジアラビアのサルマン国王は、「世界中のムスリムに対する甚だしい挑発だ。」とトランプ大統領に電話で伝え、今回の決定は不当で無責任だと非難した。

 

ムスリムが多数を占める東南アジアのインドネシアやマレーシアでも同様に、当国の大統領や首相がトランプ大統領の発言を批判している。

 

国連やEU、その他の国からも批判が集中

 

8日に国連の安保理緊急会合が行われ、アメリカへの批判が相次いだ。イギリス、フランスなど5カ国の大使が今回の決定に反対し、和平実現に向けた具体的な提案をするよう、トランプ政権に促した。

 

フランスのマクロン大統領は、中東情勢を混乱させるとして懸念を表明していたが、10日にイスラエルのネタニヤフ首相と会談。エルサレムをイスラエルの首都だと認定することには同意できない、と直接ネタニヤフ首相に伝えた。

Twitter/Raphael Ahren

中国の外交部(外務省)も次のように表明している。

「エルサレムの問題は複雑かつ敏感である。慎重に事を運ぶべきで、地域に新たな対立が引き起こされることのないようにするべきだ。」

 

「中国側は終始揺るがず、東エルサレムを首都とし、完全な主権を有し、独立したパレスチナ国家の建設を支持している。」

 

喜ぶイスラエル、一方で批判的なユダヤ人も

 

世界各国から批判、懸念されているトランプ大統領の発言だが、唯一喜んでいるのが当のイスラエルだ。

 

イスラエルのネタニヤフ首相は、歴史的な日だと述べ、トランプ氏に深く感謝していると語った。

 

10日に行われた、フランスのマクロン大統領との会談では、「エルサレムは3000年にわたりイスラエルの、また70年にわたりユダヤ人国家の首都だった。」とし、和平に向け前進するにはパレスチナ人たちが「現実を直視」しなければならない、と述べた。

 

一方で、超正統派ユダヤ教徒の組織「ネトゥレイ・カルタ」は、イスラエル国家建設に反対しており、トランプ大統領に再考を求める嘆願声明を出している。

Facebook/Neturei Karta International

エルサレムとは?

 

1948年、イスラエルはユダヤ人国家の建国を宣言する。その後勃発した第一次中東戦争で、西エルサレムを支配し、1967年の第三次中東戦争で東エルサレムを占領した。

 

特に東エルサレムにはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地があり、帰属性が争われている。パレスチナは、この東エルサレムを首都として建国することを目指している。

 

国連参加国の大半が、イスラエルによる東エルサレムの統治権を認めておらず、国際管理下に置くべきだと主張。しかし、イスラエルはこれを無視し、現在までこの地を実効支配している。

Flickr_Dan
Flickr_gnuckx

イギリスの責任も大きい?

 

長年にわたる紛争により、最難関の問題とされるパレスチナ・イスラエル問題だが、ここまで複雑になったのには、イギリスの関与も大きい。

 

第一次世界大戦においてイギリスは、敵国だったオスマン帝国に対抗するためアラブ人(パレスチナ人)に協力を求めた。その対価として、この地域の独立を認めるフサイン=マクマホン協定を結んだ。

 

一方で、イギリスはユダヤ人に対しても資金の援助を求め、その見返りとしてユダヤ人国家の建設を支持する書簡を出した。(バルフォア宣言)

 

しかし同時に、イギリスは大戦後の中東地域の分割を連合国のフランス、ロシアと協議しており(サイクス=ピコ協定)、実はこれが本来の目的だったのだ。

 

こうしたイギリスの「三枚舌外交」により、第一次世界大戦後、この地域での紛争がますます激しくなっていった。ある意味ではユダヤ人とアラブ人、双方共に列強に翻弄された被害者だといえるかもしれない。

日本政府の見解は

 

このようにエルサレムをめぐる問題は、非常に複雑かつ繊細である。そんな中でのトランプ大統領の発言は、今後の中東、いや世界情勢に影響を与えることが懸念される。

 

各国の首脳が、発言への批判や首都認定に同意しない等、明確な意思表示をしている中、日本政府は賛否を示していない。

 

河野外務大臣は7日、「中東和平を巡る状況が厳しさを増し、中東全体の情勢が悪化し得ることを懸念している。」と記者団に表明。一方で、中東和平交渉に引き続き関与するとしたトランプ政権へは「評価する」と述べた。

 

最大の同盟国であるアメリカに配慮してのことだろうが、静観しているのは同意しているのと同然だと、他国から言われかねない。親友だから何をしても黙っているのではなく、相手が問題を起こした際に、間違いを指摘し、軌道を修正してあげるのが本来の親友ではないだろうか。(了)

 

出典元:BBC:US to recognise Jerusalem as Israel’s capital(12/6)

出典元:BBC:Jerusalem: Trump move prompts negative world reaction(12/7)

出典元:人民網:トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都に認定 中国外交部の反応(12/7)

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