狩猟ゾウの記念品持ち込み規制撤廃、この動きを進めた人々の主張とは?
トランプ政権は16日、狩猟したゾウの体の一部などを記念品として輸入する規制を撤廃すると発表。しかしその後、方針は撤回され、当面は記念品の輸入禁止を維持することになった。
ゾウの狩猟を助長させることに
アメリカ連邦政府の機関は、11月17日からアフリカのジンバブエやザンビアなどで合法的に狩猟された、ゾウの体の部位を記念品として国内へ持ち込ませることを再開すると発表した。
アフリカゾウは絶滅危惧種に指定され、アメリカの法律でも保護が義務づけられてきたが、この輸入規制の撤廃により、ジンバブエとザンビアは管理計画でハンティングを許可することになり、アメリカ人によるアフリカゾウの狩猟が可能になるそうだ。
アメリカ魚類野生生物局(USFWS)は、この決定に対してハンティング料が増えることで、絶滅危惧種の保護に役立つとして歓迎の意向を表明したという。
しかし「2016 Great Elephant Census」の報告では、アフリカゾウの個体数は減少し続けており、2007年から2014年にかけて30%も減っているとされ、専門家らは警鐘を鳴らしている。
全米ライフル協会とパートナーの団体が進める
非営利の保護団体の報告によれば、ジンバブエだけでもゾウの個体数が6%も減少しており、また2010年以来、アフリカ全土に住むゾウは毎年7%ずつ、つまり1年で平均3万頭ずつ死んでいるという。
ただゾウは絶滅危惧種法においてリストに挙げられているが、これまでのアメリカの法律ではハンティング料が種の保護に役立つという十分な証拠があれば、動物のはく製など記念品の輸入を許可する方針になっていたそうだ。
USFWSもゾウの個体数を枯渇させるよりも、むしろ殺したほうが野生において種の生存が高まると主張。彼らは声明で次のように述べている。
「合法的に管理プログラムの一部として、きちんと規制されたスポーツ・ハンティングは、種の保護に役立つことができる。種を保存するため地元のコミュニティに使用料を提供することによって、またずっと多く必要とされている資金を保護活動に回すことによって役立つことができる」
今回の規制撤廃については、ハンティングを積極的に推し進めている「Safari Club International Foundation」という団体によって催されたフォーラムにおいて発表されたという。
またこの団体は、法律改正を目指しロビー活動を進めるため、「全米ライフル協会」とパートナーを組んでいるとされている。
トランプ・サポーターも批判
この発表に対しゾウの保護を訴えてきたグループは反発。アフリカのゾウやカバ、サイの保護活動に取り組んできた非営利団体「The Elephant Project」は「トランプ政権による不埒な行動」とツイート。
さらに「すでに1日に300頭のゾウが殺されている。この規制撤廃はより多くの密猟へとつながる」と述べている。
Reprehensible behaviour by the Trump Admin. 100 elephants a day are already killed. This will lead to more poaching. https://t.co/rld67eM018
— The Elephant Project (@theelephantproj) November 16, 2017
また有名なトランプ・サポーターであるFOXニュースのLaura Ingraham氏などを含む、多くの評論家などもソーシャルメディアを通じて、今回のトランプ政権の動きを批判しているという。
I don't understand how this move by @realDonaldTrump Admin will not INCREASE the gruesome poaching of elephants. Stay tuned. https://t.co/KqizmlgaGg
— Laura Ingraham (@IngrahamAngle) November 16, 2017
南アでは狩猟のためにライオンを人工繁殖
そもそもこの輸入規制は2014年のオバマ前政権時代に、アフリカゾウの個体数減少を受けて導入された。つまり動物の体の部位の輸入規制をコントロールすることで、保護に役立てるのが目的とされている。
また以前、ジンバブエにあるHwange国立公園で暮らす有名なライオン「Cecil」を、アメリカ人歯科医師のハンターが680万円を支払って殺害し、その様子を自慢げに撮影したとして、世界から多くの非難が寄せられた。
しかしこのような趣味として合法的に野生動物を狩猟する「トロフィー・ハンティング」の需要が未だに根強いことを示すかのように、南アフリカでは「Predator Farm」という農場で、あえて狩猟のためにライオンを人工繁殖させ、客に殺させるビジネスも大規模に行われている。
そしてトランプ大統領の息子、トランプ・ジュニア氏も以前、ハンティングのためにアフリカを訪れたことが知られており、その時撮られた写真には、殺されたゾウの尻尾を切り取った姿が写っている。
Trump administration plans to reverse Obama-era ban on import of elephant trophies from Africa. Great news for @DonaldJTrumpJr. pic.twitter.com/Rvf5yEutgV
— Scott Dworkin (@funder) November 16, 2017
しかし17日、トランプ大統領はジンバブエで狩猟したゾウの体の一部を記念品として米国に持ち込むことについて許可するとした判断をわずか1日で覆し、当面は輸入禁止を維持する姿勢を明らかにした。(了)
出典元:BBC:US to lift ban on elephant hunting trophy imports(11/16)他