米・EUもウクライナに追加の軍事支援、露外相は西側の長距離砲を批判
アメリカ政府は、ウクライナに高機動ロケット砲システムを追加で提供することを明らかにした。
「HIMARS」を4基追加、合計16基
ウクライナ側は7月19日、M142高機動ロケット砲システム「HIMARS」の追加支援をアメリカ政府に要請していた。
これを受け、アメリカのロイド・オースティン国防長官は7月20日、ウクライナ側に「HIMARS」を4基、追加で提供し、合計で16基とすることを明らかにした。その際、オースティン国防長官は次のように述べたという。
「ウクライナ軍はHIMARSを素晴らしく運用しており、戦場でその効果を見ることができる。ロシアは執拗な砲撃を続けており、これは第一次世界大戦の恐怖を思い起こさせる残酷な戦術だ。ウクライナには、この砲撃に耐え、反撃するための火力と弾薬が必要だ」
またアメリカは、最大80km離れた標的を正確に攻撃できる誘導多連装ロケットシステム「GMLRS」の弾薬も、追加提供する予定だ。
ウクライナ側は、より射程の長い弾薬を求める
しかし、これ以前の7月19日、ウクライナのレズニコフ国防相は、「HIMARS」の大幅な支援を要求し、ロシア軍への効果的な反撃のためには、少なくとも100基が必要だと述べていた。
また、ロシア軍の後方支援を断ち切るため、100〜150キロの射程がある長距離弾薬の提供も求めていた。
しかし今回、アメリカ統合参謀本部議長のマーク・ミリー将軍は、「HIMARS」の発射台には「GMLRS」ロケット弾を6発搭載できるが、300km先の標的を攻撃できる「ATACMSミサイル」は1発しか搭載できないと指摘し、事実上提供を拒否した。
そもそもバイデン政権は、ウクライナ軍がロシア領内の標的を攻撃し、この戦争が西側との直接衝突に拡大する可能性を懸念し、これまで長距離用の弾薬の提供を拒否してきた。
EUも700億円の追加支援を発表
一方、欧州連合(EU)は、ウクライナに5億ユーロ(約700億円)の軍事支援を行う予定だと発表した。
EUのジョゼップ・ボレル外務局長は、EUがウクライナへの支援に「集中し、揺るぎない」姿勢を維持していると強調している。
またリトアニア国防省も7月20日、ウクライナにさらなる軍事支援を提供すると明らかにした。
リトアニアは近々、ウクライナ側から切望されていたM13とM577装甲兵員輸送車、および予備訓練用の弾薬など、追加の軍事支援を提供する予定だと発表した。
また、ウクライナの国家警備隊のために幅広い軍事訓練を行うことも提案。リトアニア軍はそれに対応する準備が整っていると述べたという。
ロシア外相の反応とは?
このような動きに対しロシア外相は、西側諸国を批判。長距離兵器を提供することでウクライナの戦争を「悪化」させようとしていると主張した。
ロシアのラブロフ外相は、ドイツ・メディアの「ドイチェ・ヴェレ」」のインタビューにおいて、次のように語った。
「西側がひ弱な悪意を持って、状況を悪化させようとしており、ウクライナに長距離兵器を送り込んでいる。このことは地理的な(攻撃)目標が、現在のラインからさらに拡大することを意味する」
ウクライナ軍は「HIMARS」を使って、ロシア軍の司令部や弾薬庫を30カ所ほど破壊したと主張してきたが、ラブロフ外相の発言からも、西側の長距離砲がロシア側にとっては痛手となっていることが伺える。(了)
出典元:The Guardian:Russia-Ukraine war: Moscow says peace talks ‘don’t make sense’ and hints at plans for new annexations – live(7/20)