サイの密猟防止プロジェクトで、角に放射性物質を埋め込む【南アフリカ】
南アフリカ共和国の科学者らにより、野生のサイの密猟を防ぐ、画期的なプロジェクトが行われた。
角に小さな穴を開けて挿入
このプロジェクトを率いたのは、南アフリカにあるウィットウォーターズランド大学のジェームズ・ラーキン教授だ。
教授らは6月25日、南アフリカ北部のリンポポ州の町、モコパネにある「サイ孤児院」において、20頭のサイの角に放射性同位体を挿入したという。
20頭のサイは鎮静され、それぞれの角に小さな穴を開けられ、無毒の放射性同位体が挿入されたそうだ。
挿入時には専門の獣医が綿密に監視し、動物に害が及ばないよう細心の注意が払われた。
3年かけたプロジェクト
この密猟防止プロジェクトは3年かけて進められており、放射性同位体の挿入は研究の「最終段階」だったとされている。
ラーキン教授によれば、放射性同位体を角に埋め込む目的は、最終消費者の目から見てサイの角の価値を下げることと同時に、国境を越えて密輸される角を見つけやすくすることだという。
実際、角に埋め込まれた放射性同位体は、国境の放射線モニターで検出されるそうだ。
また何カ月にもわたる研究とテストを経て、挿入された放射性同位体が動物や、その世話をする人々に、健康やその他のリスクをもたらさないことも確認されているという。
南アフリカでは密猟が増加
ラーキン教授によれば、サイの角は現在、闇市場で取引される最も価値の高い商品となっており、金やプラチナ、ダイヤモンド、コカインよりも高い価値を持っているという。
また国際サイ財団の統計によると、南アフリカは世界最大のサイの生息地で、世界のシロサイ1万6800頭とクロサイ6500頭のうち、それぞれ約80%と33%がここに生息しているそうだ。
南アフリカでは密猟が増加しており、同国の環境省は今年初め、2023年に全国で499頭のサイが密猟されたと発表している。
専門家チームは現在、この斬新なアプローチの実現可能性を判断するために、今後6カ月間、サイの健康と生命の徴候を監視する予定だという。(了)
出典元:ABC News:Radioactive material inserted into Rhino horns in anti-poaching project(6/27)