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メキシコ湾に生息するイルカの体内から、フェンタニルなどの薬物を検出

メキシコ湾に生息するイルカの体内から、フェンタニルなどの薬物を検出
flickr_Brandon Trentler

メキシコ湾に生息する数十頭のイルカから、薬物が検出され、科学者らが警鐘を鳴らしている。

 

フェンタニルや筋弛緩剤、鎮静剤を検出

 

この調査は、2020年9月、メキシコ湾のイルカの個体数の調査を行っていた海洋生物学者が、水中に浮かぶ死んだイルカを発見したことから始まったという。

 

発見された当時、イルカはまだ尾が動いており、死んだばかりだったため、研究者はテキサスA&M大学コーパスクリスティ校に運び込んだという。

 

そしてテキサスA&M 大学コーパスクリスティ校の生化学者、フセイン・アブドゥラ氏とチームを組み、研究者らはイルカの組織内に化学物質が含まれているかどうかを分析。

 

その結果、サンプル組織内から3つの特定の化合物 、フェンタニルや筋弛緩剤、鎮静剤の痕跡が検出されたという。

 

89頭のうち24頭のサンプルから薬物

 

その後、同大学の学部生であるアーニャ・オカンポスさんは、89頭のイルカのサンプルを質量分析器で調査。

 

89頭のうち83頭は、南テキサスのコーパスクリスティ湾近くの浅いラグーンに生息し、そのサンプルは生きたイルカの生体組織から採取されたという。

 

この結果、24頭のサンプルから薬物を検出。もっとも多かった薬物は、強力な鎮痛剤であるフェンタニルだったそうだ。

 

しかも検出された薬物の一部は、2013年にミシシッピ川の河口から採取された、過去のサンプルのものと同じだったという。このことから、薬物がメキシコ湾に長期間存在していたことが示唆されたそうだ。

 

獲物の魚にも薬物がある可能性

 

今回の研究論文の共著者で、テキサスA&M大学の海洋生物学プログラムのダラ・オーバック助教授によれば、そもそもイルカは水を飲まず、水分を魚などの獲物から摂取しているため、これらの魚にも薬物が蓄積している可能性があるという。

 

フェンタニルは、ヘロインの50倍、モルヒネの100倍の鎮痛作用があると言われており、値段も安く、すぐにハイになれるため、違法薬物の代わりに飲む人がいるという。

 

しかもメキシコで密造されたものが国境を越えてアメリカに流入し、密売人などを通じて違法に売買されており、フェンタニルを飲んで命を落とす人も増えているそうだ。

 

オーバック助教授は、イルカの体内の薬物が、メキシコ国境に近い場所で船外から投棄されたものである可能性や、農業排水や人間の生活排水も化学物質の発生源である可能性があると考えている。

 

2020年に捕獲されたイルカは、テキサス州の町、Robstownに隣接する海域で見つかっており、Robstownでは以前、アメリカ史上最大の液体フェンタニルが警察によって摘発されたという。(了)

 

出典元:ABC News:Several drugs, including fentanyl, found in bottlenose dolphins in Gulf of Mexico, scientists say(12/7)

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