北極圏のツンドラ、炭素の排出量が吸収量を上回る
永久凍土が広がる北極圏のツンドラから、近年多くの炭素が排出されていることが報告された。
炭素を吸収し続けてきたツンドラ
そもそも北極圏のツンドラ地帯は、これまで数千年にわたり、大気中の炭素を吸収し続けてきたと言われている。
しかしアメリカ海洋大気庁(NOAA)が12月10日に発表した報告書によれば、北極圏のツンドラは劇的な変化を遂げており、頻繁な山林火災により二酸化炭素の排出源に変わったという。
またNOAAの報告書では、今年の北極圏の年間地表気温が、1900年以降で2番目に高かったことも明らかにされたそうだ。NOAAのRick Spinrad氏は、次のように述べている。
「私たちの観測によると、温暖化と山林火災の増加が見られる北極圏のツンドラは、現在、吸収量(貯蔵量)を上回る炭素を排出しており、気候変動の影響を悪化させるでしょう」
北極は世界平均の4倍の速さで温暖化
この報告書によれば、北極圏は11年連続、世界平均の最大4倍の速さで温暖化しており、気候の温暖化は、北極圏に二重の影響を及ぼしているという。
まずツンドラでは、植物の生産性と成長が刺激され、大気から二酸化炭素を除去する一方で、温暖化により地表温度が上昇し、永久凍土の融解を引き起こすという。
そして永久凍土が融解すると、凍土に閉じ込められた炭素が微生物によって分解され、二酸化炭素とメタンという2つの強力な温室効果ガスとして大気中に放出されるそうだ。
この研究に協力した「Woodwell Climate Research Center」の科学者、Susan M. Natali博士は次のように述べている。
「この危機に効果的に対処するには、北極が吸収して貯蔵する炭素の量に、気候変動がどう影響するか、またどれだけ大気中に放出されるかについて、正確で総合的かつ包括的な知識が必要です。この報告書は、排出量の規模をはかる重要なステップであることを表しています」
山林火災で放出される炭素
さらに気候変動は高緯度地域の山林火災も激化させており、焼失面積や激しさ、そして炭素排出量も増加しているという。
山林火災は植物や土壌有機物を燃やして炭素を大気中に放出するだけでなく、断熱層となっている地表の土壌を剥ぎ取り、永久凍土の長期的な融解と、それに伴う炭素排出を加速させるそうだ。
NOAAによると、2003年以降、北極圏の山火事による炭素排出量は、年間平均2億700万トンに達しているという。
「Woodwell Climate Research Center」の科学者で、今回の報告書の寄稿者であるブレンダン・ロジャース博士は、次のように述べている。
「近年、気候変動による山林火災の増加が、地域社会と永久凍土に蓄えられた炭素の両方を脅かしていることがわかっていますが、現在では大気への累積的な影響を測定できるようになりつつあり、その影響は重大です」(了)
出典元:The Guardian:Arctic tundra is now emitting more carbon than it absorbs, US agency says(12/10)