アルツハイマー人口が半分に?新たに開発されたワクチンが目覚ましい効果
超高齢化社会において、認知症とどう向き合っていくかというのは世界共通の悩みとなりつつある。
しかし近い将来、そんな現状に変化をもたらすことができるかもしれない。
米国で実験段階にあるワクチンが、アルツハイマー型認知症に対して目覚ましい効果を発揮することが明らかとなったのだ。
アルツハイマー型認知症の診断数が半分に?
この研究結果を発表したのは、米国のテキサス大学南西医療センター(University of Texas Southwestern Medical Center)の研究チーム。
この研究を行った研究者の一人が伝えたところによると、ワクチンの安全性と効果が人間においても証明されれば、アルツハイマー型認知症の診断数を半分にすることが可能かもしれないという。
研究においてはマウスにウサギ、さらにサルにおける実験が既に行われており、研究チームは人間への実証実験も近い将来行っていきたい考えを示している。
ワクチンの仕組みとは?
アルツハイマー型認知症とは、認知症の中でも最も一般的にみられるもので、アルツハイマー病を原因とする認知症のことを指す。
このアルツハイマー型認知症を引き起こす原因としては脳内にたんぱく質が蓄積されてしまうことで、これにより脳細胞の損傷や神経伝達物質の減少が起こり、脳全体が委縮してしまうのだという。
一方、今回明らかにされたワクチンは、マウスを用いた動物実験等において、脳内におけるたんぱく質の蓄積を安全に妨げることが示されているという。
その仕組みはアルツハイマー病の原因となるたんぱく質のDNAを用い、免疫システムに対しそれらに対して戦い、脳内に蓄積することを妨げるように調教するというもの。
またワクチン摂取の際には、皮膚の表面に注射を行うのだという。
一方、アルツハイマー型認知症のワクチンが開発されるのは今回が初めてのことではないが、以前開発されたワクチンにおいては脳炎などといった脳に対する致命的な副作用をもたらすことがあり、安全性が確保されていなかった。
ワクチン接種で寿命も延びる?
他方で今回のワクチンが人間に対しても使用できるようになれば、アルツハイマー型認知症そのものの減少以外でも大きなメリットがありそうだ。
これについてテキサス大学南西医療センターのDoris Lambracht-Washington氏は、ワクチンが利用できるようになり、アルツハイマー型認知症の進行を遅らせることが可能となれば患者の寿命を延ばすことも可能になるとの見解を示している。
これについてLambracht-Washington氏は「もし病気の発症を5年遅らせることが出来れば、これは患者と家族にとって非常に大きなことだ」としている。
アルツハイマー型認知症は超高齢化社会となった日本においても悩みの種であるが、米国においても死亡原因の中で多いものの一つに数えられる深刻な問題だ。
米国では2000~2015年の間にこの病気により死亡した人の数が123%も増加。
また現在570万人もの人がアルツハイマー型認知症を患っているが、この数は2050年までにはさらに1400万人にまで増えることが予測されているという。
アルツハイマー型認知症に対して、大きな効果を発揮することことが期待されるワクチン開発のニュース。人間における安全性と効果が証明され、認知症に悩める人の元へと届く日が一刻も早く訪れることを待ち望むばかりだ。(了)
出典:USA TODAY:Researcher: Alzheimer’s vaccine could cut dementia in half, human trials may be next (11/24)
出典:Newsweek:Experimental Alzheimer’s Disease Vaccine Tested in Mice Cut Dementia Cases(11/26)
出典:Forbes:UT Southwestern Medical Center Researchers Discover Alzheimer’s Vaccine, Hope To Test In Humans Soon(11/23)
出典:Lifull:アルツハイマー型認知症とは?発症のしくみや症状