「デルタ株により、ワクチンでは集団免疫を獲得できない」オックスフォード大学教授
イギリスの大学教授が、新型コロナウイルスに対する集団免疫を獲得できる可能性について、否定的な見解を述べた。
ワクチンを接種していない人が感染する
オックスフォード大学・ワクチン研究グループのAndrew Pollard教授は先日、新型コロナに関する全党議会グループの会合に出席した。
そこでPollard教授は下院議員らに対し「人口の95%がワクチンを接種すれば、麻疹(はしか)の感染の広がりを抑えることができるかもしれない。しかし同じことは、Covidには当てはまらない」と述べたという。
そして「このことは、未だにワクチンを接種していない人が、どこかの時点で、ウイルスに感染することを意味している」と警告した。
「ワクチンでは抑え込めない」
そもそも集団免疫とは、十分な数の人がワクチン接種か、もしくは過去にウイルスに感染することで抗体を持ち、残りの人々には病気が広がらない状態を指す。
しかし、Pollard教授によれば、ワクチンは新型コロナの広がりを遅くできるかもしれないが、インド由来のデルタ株は感染力が高いため、ワクチンではそれを完全に抑え込めないという。その上で教授は、次のように語っている。
「コロナウイルスについては、現在のデルタ型が、ワクチンを接種した人にも感染することがはっきりしていますが、これは、まだワクチンを接種していない人が、ある時点でウイルスに感染することを意味します。ワクチンを接種した人にも感染するため、集団免疫が成立しない状況にあると思います」
そして「ワクチンを接種した集団の中において、感染力がさらに強い変異株が次に現れるかもしれない」と述べ、「集団免疫を中心としたワクチン・プログラムを組むべきではないという理由になる」と述べた。
現在、イギリスでは2回のワクチン接種を終えた人が、人口の75%に達しているが、そのことを踏まえた上で、Pollard教授は次のようにも述べている。
「この先の6ヶ月間は、本当に重要な整理の段階であり、エピデミック(蔓延)からエンデミックへの移行、つまりCOVIDとの共存の段階だと思います」(了)
※エピデミックとは、感染症が予測を越えて特定の地域で拡大すること。世界的に広がったものをパンデミックと呼ぶ。エンデミックとは、感染症が一定の季節ごとに発生し、エピデミックよりも狭い範囲で、比較的緩やかに広がっていく状態を指す。
※集団免疫については、Natureでも以前から議論されている。日本語版となっており、理由なども詳しく書かれているので、是非そちらも参考にしていただきたい。
出典元:Sky News:COVID-19: Herd immunity ‘not a possibility’ with Delta variant, says head of Oxford Vaccine Group(8/10)