アポロ計画で採取された月の土を使い、初めて植物を育てることに成功
アメリカで、研究者らが月の土を使い、植物を育てることに成功した。資金を提供したNASAは、今回の成功が、将来的に月面で植物を収穫する可能性に道を開くと述べている。
複数のアポロ計画で採取された土壌
この研究を行ったのは、フロリダ大学の研究者たちだ。彼らはNASAから「レゴリス(堆積層)」と呼ばれる月の土を受け取ったという。
この土はアポロ11号、12号、17号の月へのミッションで採取されたものとされている。
その上で、研究者は約1グラムの月の土を鉢植えにし、栄養液で湿らせ、育てやすい植物の「Thale cress(シロイヌナズナ)」の種を植えたそうだ。
その後、テラリウムの箱にトレイを入れ、毎日栄養剤を加えたという。その結果、植物はすべて48時間から60時間以内に発芽した。
対照群の植物とは異なる成長
この研究に携わったアンナ・リサ・ポール氏によれば、実験により、月の土壌が植物の発芽に関わるホルモンやシグナルを阻害しないことが分かったという。
しかし発芽から6日目には、月の土の植物は、火山灰を土として使用した対照群のシロイヌナズナとは異なる成長をし始めたそうだ。
NASAによると、月のレゴリスの植物は成長が遅く、根が発育しないことがわかったという。また、いくつかの葉は発育不良で、赤みを帯びた色素を呈していたそうだ。
植物が月の土壌にストレスを感じる?
さらに20日後、植物のRNA配列から月の土壌で育ったものがストレス下にあり、植物が過酷な環境で通常行う方法で反応していることが分かったという。
しかも植物は、月の土壌サンプルによっても異なる反応を示した。アポロ11号の土壌で育った植物は、他の2つのアポロ・ミッションの土壌で育った植物ほど「強健ではなかった」という。
それぞれのアポロ・ミッションでは、月面の異なる場所から土壌を採取していたそうだ。
それでも、NASAのビル・ネルソン長官は「この研究は地球上の食糧難の地域で、植物がストレスの多い状況をどのように克服するかを理解する上で重要である」と述べている。(了)
出典元:CBS:Scientists grow plants in soil from the moon for the first time in history(5/12)