南極の魚に寄生虫による病気が蔓延、腫瘍ができるケースが増加
南極大陸付近の海域に生息している魚に、寄生虫による病気が蔓延しているという研究結果が発表された。
「ノトセリア」と呼ばれる魚を研究
この研究を行ってきたのは、アメリカのオレゴン大学の生物学者らだ。
彼らは10年ほど前から西南極半島を訪れ、「ノトセリア(Notoxcellia)」と呼ばれる魚を研究してきたという。
そして生物学者のジョン・ポスルスウェイト氏とトマス・デヴィーニュ氏は、多くの「ノトセリア」の間で寄生虫の病気が蔓延し、それにより皮膚に腫瘍ができる症状を確認したそうだ。
腫瘍が寄生虫によるものと判明
発表された研究結果では「腫瘍は淡いピンク色で盛り上がり、ざらざらしていて、体幹と頭部の様々な場所に現れ、体表面の3分の1以上を覆っている場合もあった」と説明している。
「ノトセリア」は南極の厳しい環境に適応した魚だったが、2人の生物学者は2018年に初めて、腫瘍を確認。さらにウイルス学者や病理学者と協力し、腫瘍が寄生虫の病気の結果であることを突き止めたという。
しかも今回の寄生虫の蔓延や、腫瘍になる事態は、南極付近ではかつてない規模で発生しているそうだ。
その原因について研究論文では「病気の発生原因を特定することは難しいかもしれません。しかし、南極の生態系は気候変動の影響を特に受けやすく、特に急激な変化が見られます」と書かれている。
気候温暖化との関係は?
その説明によれば、氷が溶けると、近くの水の塩分濃度が低下し、「ノトセリア」が生息する底層水は特に早く暖かくなり、より淡水に近くなるという。
また気候変動は寄生虫のライフサイクルにも影響を与え、おそらくより効果的に拡散・感染する可能性があると指摘している。
もっとも病気の大量発生が、気候変動とは無関係の場合もあり得る。このため研究チームは「確かなことを言う前に、もっとデータを集める必要がある」とも述べている。(了)
出典元:METRO:Gruesome skin tumours found on Antarctic fish caused by climate change(7/4)