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米科学者が人間の脳の一部をマウスに移植、機能させることに成功

米科学者が人間の脳の一部をマウスに移植、機能させることに成功
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アメリカの研究者たちが、人間の脳の一部をマウスに移植することに成功し、注目を集めている。

 

胚性幹細胞を使い、脳に似た細胞に誘導

 

その移植を行ったのは、スタンフォード大学医学部の研究者たちだ。彼らは人間の脳組織をマウスに移植し、マウスの脳の一部として機能させることに成功したという。

 

移植されたヒトの脳組織は、皮膚細胞を胚性幹細胞に変える技術を使って、研究室で作られたもの。

 

胚性幹細胞とは、胚が成長する際に他のすべての元となる細胞のこと。科学者はこの胚性幹細胞を発生経路によって誘導し、人体に存在する200種類以上の細胞のうちのどれか1つ、または複数のタイプの細胞に成長させることができるという。

 

そして今回、研究者らは、脳の一部に似たこれらの細胞の塊を作り出した。その塊はオルガノイド(原形質類器官)と呼ばれるもので、言語や記憶、思考、学習、意思決定、感情、知性、人格など、脳の最も高度なプロセスを司る大脳皮質に似たものだという。

 

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マウスの脳が人間の脳を取り込む

 

その後、研究チームは、生後2〜3日のマウスの脳に、注射器を使ってヒトの脳組織を注入。するとマウスの脳細胞はヒトの組織に移動し、結合して形作り始め、ヒトの細胞を自身の脳に取り込んだという。

 

移植されたヒトの脳組織の大きさはおよそ5分の1インチ(約5mm)。移植後、それは拡大し、6ヵ月後にはマウスの脳の半球の約3分の1を占めたそうだ。

 

さらに脳は右と左の2つに分かれ、それぞれ異なる機能を担うことになったとか。

 

しかもマウスの脳の奥深く、睡眠や意識、学習、記憶など、嗅覚を除く五感の情報処理を行う重要な視床と呼ばれる部位でも、ヒトとマウスの細胞が結合していたという。

 

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自閉症、てんかんなどの研究に活用

 

実はこの研究は、脳疾患に対する理解を深め、新たな治療薬の発見を可能にすることを目的にしているという。

 

例えば自閉症、てんかん、統合失調症、知的障害などの研究への最も直接的な応用が期待されているそうだ。

 

この研究は10月12日に科学誌『ネイチャー』に掲載されたが、完成までに7年を要し、論文では動物福祉やその他の問題についての広範な倫理的議論も行われているという。(了)

 

出典元:The Washington Post:Transplant of human brain tissue into rats could help study autism, other disorders(10/12)

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