VRにAI…スペインで公開された近未来の観光業の姿がすごいと話題に


スペイン・マドリードで開催された国際観光見本市(FITUR)。そこで公開された、近未来の観光に関わる技術がすごいと話題を呼んでいる。

 

近未来にはホテルの姿も劇的に変化?

 

マドリードで先月17~21日まで開催されたFITURで公開されたのは、いずれも近未来に導入が検討、あるいは既に導入された最先端技術の数々だ。

 

中でもまず注目に値するのは、近未来のホテルの姿だろう。

 

FITURで公開されたホテルのプロトコルでは、受付に人が存在せず、その代わりに顔認識機能が搭載された鏡が設置されており、宿泊客はこれを通じてチェックインを行う。

 

しかしさらにすごいのは、その後だ。

 

顔認識によるチェックインが正常に行われれば、予約時に宿泊客が記入した情報に基づき、滞在する部屋の気温や明るさ、さらにはデジタル式の額縁内に飾る絵はゴッホやピカソか、などといった細かい要求の全てが自動的に満たされるという。

 

スペインのホテル技術研究所の所長で、スペイン観光部門におけるイノベーションの推進に務めるAlvaro Carrillo de Albornoz氏は「テクノロジーは、当の本人が何を望んでいるか知る以前に、顧客が望んでいるものを教えてくれる」という。

 

 

40もの言語でピザの注文が可能な技術も

 

フランスの技術コンサルティング会社Altranが高級ホテル向けとして展示した技術では、最先端技術である発話認識技術により、40もの言語によりピザを注文することが可能だという。

 

さらにAltranのイノベーション部門を取り仕切るCarlos Mendez氏は、部屋の鍵にも最先端技術が応用されていることに言及。

 

欧米で広く普及しているメッセンジャーアプリである“WhatsApp”を通じ、部屋の鍵の開閉が可能であるとしている。

 

さらに注目すべきなのは、部屋に取り付けられたセンサーだ。

 

これにより宿泊客が寝ている間の動きを記録すると共に、起床のタイミングに合わせてコーヒーを届けるといったサービスが可能になるという。

 

 

AIを用いた技術の可能性も

 

近年、ホテル等の宿泊施設では、人工知能(AI)を導入することを望む声が上がり始めている。

 

それというのも人工知能を用いることが可能となれば、予約時の情報や、宿泊客がかつて施設を訪れた際にビーコン技術等により収拾した情報から、宿泊客に関するより詳細な情報を収拾することが可能となり、ビジネスの可能性が広がるためだ。

 

業界側は宿泊客の習慣等詳細な情報を入手することができれば、顧客一人ひとりに合わせたサービスを提供することにより、再び宿泊してもらえる可能性が広がると共に、さらなる商品を買ってもらうことも可能になるかもしれないと見込む。

 

Carrillo氏は「AIが宿泊客側の詳細な情報を入手していれば、妻とホテルに宿泊し食事を取る際、レストランへ行くのではなくルームサービスを利用する場合でも、シャンパンのボトルと共に特別なルームメニューを提供することができる」という。

 

さらにCarrillo氏は「もし家族全員で宿泊する際には、子供用メニューも提供できる」とし、AIを利用したビジネスの可能性を指摘している。

 

ホテル業界のコンサルタントを務める企業、Hotel Servicersの社長Rodrigo Martinez氏によると、このような技術はホテル側の生産性をも高めることができるという。

 

「全てのものの購入は自動化できる。例えば、大人数のイギリス人顧客が宿泊する際には、通常より多くのベーコンを注文しなければならない、といったことをシステム上認識できる」

 

しかし一方で、宿泊施設においてビーコン技術を用いることに関しては懸念もある。

 

ビーコンとはBluetoothを使用する際のいわば信号の発信機であるが、これをホテル等に設置すれば、宿泊客のスマートフォン上の情報を探ることが可能になる。

 

そのため宿泊客がどれほどの時間部屋に滞在するのか、あるいはいつプールを訪れるのか、などといった行動が筒抜けになってしまう可能性があるといい、そのような情報が悪用されてしまう可能性も否めない。

 

開拓段階のVR技術も

 

 

観光業界に関わる最先端技術といえば、ヴァーチャル・リアリティー(VR)の存在も忘れてはならない。

 

FITURの会場ではVRの世界が体験できるスタンドも数多く設置され、来場者はモロッコの一大都市マラケシュから、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼の道まで、VRを通じた観光体験が可能であったという。

 

しかしスペインでVRを用いたバーチャル・トラベルを推進する団体の組織長を務めるMarcial Correal氏は「我々の技術はまだ完全に開拓段階だ」という。

 

「観光業界関係者は“なんて素晴らしいんだ”とは言うが、購入しようとはしない。この技術は彼らにとってはマーケティング予算における優先事項ではない」

 

VRで観光体験ができるヘッドセットは、それ自体が非常に高いわけではないようだ。実際にVRを手掛ける企業であるIraltaのCesar Urbina氏によれば、ヘッドセットは50~600ユーロ(約6800~8万1000円)であるという。

 

しかし、それに加えてVRの映像ソフトも併せて購入しなければならないといい、そのお値段については「普通のビデオよりは少々高価で、2000ユーロ(約27万円)から最高で15万ユーロ(約2000万円)ほど」であるとし、決して安価ではない。

 

実際にVR技術を導入したところも

 

しかしながらそのような高価な値段にも関わらず、世界各国にホテルを展開するPalladiumでは、既にこのVR技術の導入を決定している。

 

ホテルのプロモーションの際には、クライアントにヘッドセットを装着し、それによってクライアントはホテルの部屋やレストラン、さらにはプールといったホテルに付属するものの全てをVRによって体感することが出来るという。

 

 

Palladiumの欧州におけるマーケティングを指揮するIvan Corzo氏は、VRを通じてホテルの実際の姿がどのようなものであるか知ることができるため、観光代理店側からもこの技術は販売に役立っているという声があることを挙げる。

 

さらにVR技術はモロッコの観光局によっても導入されているという。

 

モロッコ観光局のSiham Fettouhi氏は「観光は体験と感受性と結びついている」ことを指摘。

 

「ヴァーチャル・リアリティーによっては、地元の食べ物の味や海の潮の香りを伝えることはできない。しかし、VRはもっと深く探索したいという気持ちを起こさせる」

 

FITURによって明らかとなった近未来の観光に関わる技術の数々。中には夢物語のように聞こえてしまう技術もあるが、それらが実用化される日は遠くないのかもしれない。(了)

 

出典元:The Local Spain:‘Smart’ hotels and virtual reality tours: Madrid fair previews the future of tourism(1/21)

出典元:South China Morning Post:How AI and virtual reality will drive future hotels and tourism: the latest from Fitur tourism fair(1/25)