性別に関する誹謗中傷で、女子ボクシングの金メダリストがE・マスクとJ・K・ローリングを訴える
性別を巡る問題で誹謗中傷を受けたとして、女子ボクシングの金メダリストが、実業家のイーロン・マスク氏や作家のJ・K・ローリング氏などを訴えた。
アルジェリア代表の女子選手
訴えを起こしたのは、パリ・オリンピックの女子ボクシングで金メダルを獲得した、イマネ・ケリフ選手だ。
彼女はオリンピック開催中、性別による出場資格をめぐって世界的に論争を巻き起こしたが、その後、試合で勝利を重ね、アルジェリア初の女子ボクシング金メダリストとなった。
そして彼女の弁護士であるNabil Boudi氏は8月14日、「サイバーハラスメント行為」の疑いで8月9日、パリ検察庁に刑事告訴の届け出を行ったと明らかにした。
不特定多数の人物を訴える
この訴えはSNSの「X」に対して起こされたものだが、フランスの法律の下で、不特定多数の人物を訴えることにもなるという。
Boudi氏も「検察は、偽名もしくはペンネームで、憎悪に満ちたメッセージを書いた可能性のある人々を含め、すべての人々に対して捜査できる十分な裁量を持つ」と述べている。
またBoudi氏は、「訴訟ではJ・K・ローリングやイーロン・マスクなどが名前を連ねている」とし、ドナルド・トランプ氏も捜査対象になる可能性があると付け加えた。
SNSで誤った主張が拡散
ケリフさんは以前、国際ボクシング協会(IBA)が実施した性別適格性テストにおいて、男性ホルモンの数値が高かったため不合格となり、2023年の世界ボクシング選手権への出場を禁じられていた。
そしてそのことが明らかとなり、ネットでは「元男性がボクシング女子に参加している」といった誤った主張が展開され、非難の声に曝された。
またイタリアのアンジェラ・カリニ選手が、ケリフ選手との試合において、わずか46秒で棄権し、「こんなパンチを受けたことはなかった」と主張したことで、ケリフ選手は主に「X」において、激しい誹謗中傷に曝されたという。
『ハリー・ポッター』の作者であるJ・K・ローリング氏は「X」に、カリニ選手とケリフ選手の試合の写真を投稿。「女性嫌いのスポーツ界に守られていることを知っている、男のニヤニヤした笑み。彼は、女性の頭をパンチし、人生の野望を打ち砕かれた女性の苦悩を楽しんでいる」とコメントした。
また「X」を所有するマスク氏は、アメリカの水泳選手、ライリー・ゲインズ氏が「男性は女性のスポーツにふさわしくない」と述べた投稿をシェアし、「まったくその通り」とコメントしたという。
さらにトランプ氏も、自ら立ち上げたSNS「Truth Social」において、ボクシングの試合の写真を投稿し、「私は男性を女性のスポーツから締め出す!」とメッセージを添えたそうだ。
このような誹謗中傷が拡散した後、国際オリンピック委員会は、ケリフ選手が生まれながらの女性であり、トランスジェンダーではないと明言。ケリフ選手に参加資格があることを改めて強調した。(了)
出典元:The Guardian:JK Rowling and Elon Musk named in Imane Khelif cyberbullying lawsuit(8/14)