国際刑事裁判所の主任検察官、イスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を請求
国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官は、イスラエルと「ハマス」の指導者に対して、逮捕状を請求した。
「合理的な根拠がある」
ICC検察官のカリム・カーン氏は5月20日、ガザ侵攻での犯罪容疑で、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防大臣に対し、逮捕状を請求したと明らかにした。
カーン氏は、ネタニヤフ首相とガラント国防大臣らには、「戦争犯罪と人道に対する罪」に対する「刑事責任」を負っていると信じる、「合理的な根拠がある」と述べた。
またカーン主任検察官は、10月7日のイスラエル南部への攻撃に関し、「ハマス」の3人の指導者にも、逮捕状を請求した。
#ICC Prosecutor @KarimKhanQC announces applications for arrest warrants in relation to Benjamin Netanyahu and Yoav Gallant in the context of the situation in the State of #Palestine ⤵️https://t.co/WqDZecXFZq pic.twitter.com/bxqLWc5M6u
— Int’l Criminal Court (@IntlCrimCourt) May 20, 2024
国連関係者や人権団体などは歓迎
国連人権理事会から任命された特別報告者のBalakrishnan Rajagopal氏は、この逮捕状請求を歓迎。「イスラエル指導者に対しては、すべての容疑が適用される可能性が高い」と述べたという。
国際的な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」も、ICCへの逮捕状請求を歓迎。「検察によるこの原則的な第一歩は、ここ数カ月に犯された残虐行為の責任者が、公正な裁判で自らの行為について答える道を開くものである」と述べた。
また「「ICC判事がカーン(カリム)検事の要請を検討している間、敵対的な圧力が高まる可能性が高いため、ICC加盟国はICCの独立を断固として守る用意をしておくべきである」と警鐘を鳴らした。
米大統領や議員が反発
実際、この逮捕状請求を受けて、アメリカのジョー・バイデン大統領は、さっそく批判。ネタニヤフ首相とガラント国防大臣に対する逮捕状の申請は、「言語道断」だと述べた。
またアメリカ・共和党の下院議長、マイク・ジョンソン氏も、イスラエルとハマスの幹部に対する逮捕状請求に反対し、「根拠がなく違法」と発言している。
アメリカの他の議員らも反対の声を上げているが、ユダヤ人のバーニー・サンダース上院議員は5月20日に発表した声明の中で、イスラエルとハマスの指導者に対する逮捕状請求を支持し、「ICC検察官がこうした行動をとるのは正しい」とし、次のように述べた。
「ICCの検察官がこうした行動を取るのは正しい。これらの逮捕状は執行される場合と執行されない場合があるが、国際社会が国際法を遵守することが不可欠だ。これらの良識と道徳の基準がなければ、この地球は急速に無政府状態、終わりのない戦争、そして野蛮に陥る可能性がある」
ICCはこれまで、ロシアのプーチン大統領やリビアのカダフィ大佐、スーダンのオマル・アルバシル元大統領などに逮捕状を発行しているが、これまで西側の民主主義国家の指導者に逮捕状が出されたことはない。
またイスラエルはICCには加盟していないため、差し迫った訴追の可能性は低いが、もし逮捕状が発行されれば、イスラエルの指導者が国外で逮捕される可能性もあるという。(了)
出典元:Al Jazeera:World reacts to ICC prosecutor seeking Israel, Hamas arrest warrants(5/20)
出典元:The Guardian:Biden to speak at Jewish American event after calling ICC warrant for Netanyahu arrest ‘outrageous’ – live(5/20)