南極上空のオゾンホール、今年は発見以来面積が最も縮小:NASA
毎年、9月頃に広がりのピークを見せる南極のオゾンホール。その面積が今年は縮小していたことが人工衛星などの調査によって明らかにされた。
今年のピークは1640万平方キロメートル
NASAとNOAA(米海洋大気庁)の人工衛星による調査によれば、今年の南極上空に広がるオゾンホールの面積は、9月8日にピークを迎えたという。
その日、オゾンホールの面積は1640万平方キロメートルとなり、9月後半から10月にかけて1000万平方キロメートルにまで縮小していったそうだ。
実はここ数年、通常の天候状態において、南極のオゾンホールは9月の後半から10月の初旬にかけて、最大で2080万平方キロメートルにまで成長してきたと言われている。
つまり今年のピークはその面積を大幅に下回ったことになる。しかしNASAゴダード宇宙飛行センター・宇宙科学の主任研究者であるPaul Newman氏は、次のように述べている。
「これは南半球のオゾンホールにとっては、素晴らしいニュースです。しかし今年、われわれが見たものは、より暖かい成層圏の気温によるものと認識することが重要です。大気オゾン量が突然、急速な回復軌道に乗った印ではないのです」
オゾンとは?
そもそもオゾンとは、3つの酸素原子からなる、非常に反応しやすい分子であり、ほとんどが地上7マイル(約11km)から25マイル(約40km~50km)の上空にある成層圏と呼ばれる大気の層にあるという。
そしてオゾン層は、皮膚がんや白内障、免疫機能低下による感染症、植物へのダメージを誘発させる有害な紫外線を吸収し、地上に降り注ぐのを防ぐ役割を果たしている。
南極のオゾンホールは、南半球の冬の後半から、太陽光線が降り注ぎ始め、オゾン破壊を進めることで形作られていくそうだ。
これらの破壊は、人間が作り出した化合物から出る塩素や臭素の活性体の、化学的な反応が関与している。
それらの形成に導く化学的作用は、冷たい成層圏で形作られる雲の粒子の表面で起きる化学反応に関わり、最終的にはオゾン分子を破壊する連鎖反応へ行きつく。
一方暖かい気温では、ほとんど成層圏で雲は形成されず、長く持続することもないため、オゾン破壊プロセスを制限しているという。
2070年には1980年レベルに回復か
32年前、国際社会は「オゾン層破壊物質に関するモントリオール議定書」に署名し、これによりオゾン層を破壊する化合物の生産と消費などが規制された。
これらの人間が作ったオゾン層破壊物質の大気濃度は2000年に最大に達し、その後ゆっくりと減少に転じたそうだ。
また冷却剤で頻繁に使用されていた塩素を含む合成化合物、クロロフルオロカーボン(CFCs)も禁止されて以来、それは徐々に減っており、同時に南極大陸上空のオゾンホールへの影響も徐々に薄れていくと期待されているという。
そして南極のオゾンについて、科学者は2070年頃には1980年のレベルにまで回復すると予測しているそうだ。(了)
出典元:NASA:2019 Ozone Hole is the Smallest on Record Since Its Discovery(10/21)