放射能を喰らう菌類、チェルノブイリ原子炉内で増殖し、NASAが実験に使用
事故を起こしたチェルノブイリ原子力発電所内で、放射線(放射性物質ではない)を食べて成長する真菌類が発見されたのをご存知だろうか。
4号炉内で増殖していた黒い菌
1991年、研究者は放置されていたチェルノブイリ原子炉内を、遠隔操作できるロボットで調査していたという。
その時、破壊された4号機の原子炉の壁に沿って、真っ黒な菌が増殖しているのを発見した。それらはまた、原子炉のコアから放出され、放射能を帯びた黒鉛と化学反応を起こしていたと見られている。
さらにその真菌類は、まるで微生物が引き寄せられて移動するように、放射線源に向かって伸び、成長していたそうだ。
放射線のある環境の中でより成長
それから10年以上たった後、当時カナダ・サスカチュワン大学の教授だったEkaterina Dadachova教授と同僚らは、それらの菌のいくつかを採取。
調べた結果、他の菌類に比べて、これらは放射線がある環境の中で、より早く成長していたことが明らかとなる。
この際に調べられた菌は、「Cladosporium sphaerospermum(クラドスポリウム属)」と「Cryptococcus neoformans(クリプトコックス・ネオフォルマンス)」「Wangiella dermatitidis」の3種類で、これらは全て莫大な量のメラニン色素を保有していたという。
メラニン色素でエネルギーに変換
そもそもメラニン色素が多い人は肌の色が黒くなるが、この色素は光を吸収し、紫外線を分散させて消す能力があると言われている。
しかし採取された菌類の中にあるメラニン色素は、放射線を吸収するだけでなく、それを成長のための化学エネルギーに変換していたそうだ。
これはちょうど、植物が緑の色素を使って、光合成からエネルギーを得る方法と似ていると考えられている。
宇宙ステーションへ運ばれ実験
その後、2016年にはNASAジェット推進研究所の研究者らが、チェルノブイリで採取された8種類の菌を国際宇宙ステーションへ運んだという。
そもそも国際宇宙ステーションの環境では、常に宇宙放射線が飛び交っているため、地球よりも40倍から80倍もの放射線にさらされる。
研究者はその環境の中で、菌類がどのように反応するのかを観察。将来、長期間に及ぶミッションにおいて、放射線から宇宙飛行士を守るための薬に適用できる分子を、この菌類が生み出すかを調べている。
この実験結果は、まだ発表されていない。しかしもしそんな薬が開発されれば、画期的な出来事になるに違いない。(了)
出典元:Real Clear Science:Fungi That ‘Eat’ Radiation Are Growing on the Walls of Chernobyl’s Ruined Nuclear Reactor(2/4)
出典元:nature:Hungry fungi chomp on radiation(2007/6/4)