まるで映画の世界!米国で夢を“操作”出来る装置が開発される
誰かが見ている夢の内容を操作するなんて映画や小説の中の話であって、現実的には不可能であると思う人が大半なのではないだろうか。
しかしそんなSF映画のようなことが、近い将来可能になるかもしれない。
米国の研究機関がこれを可能とさせる装置を開発したというのだ。
夢の操作の鍵は睡眠初期状態”ヒプナゴギア”
このSF映画のような装置を開発したのは、米国のマサチューセッツ工科大学の神経科学者Adam Haar Horowitz氏率いる研究チームだ。装置は「Dormio」と名付けられているという。
Dormioが可能とさせるのは、Haar Horowitz氏ら研究者が”Targeted Dream Incubation(TDI、標的夢培養の意)“と呼ぶ夢の内容の操作だ。
通常睡眠は1〜4段階に分類されるが、その最初のものであり”入眠期”と呼ばれる第1段階において、人は”Hypnagogia(ヒプナゴギア)”と呼ばれる覚醒と睡眠の境界にいる状態となる。
Haar Horowitz氏はこの状態における人の意識について、”幻覚体験のようで緊張が緩んでおり、柔軟で発散的”であるという。
それに加えてこの状態において特徴付けられるのが、睡眠中であるにも関わらず音を聞くと共に、聞いた音声を処理出来るということだ。
そのような睡眠第1段階における人に働きかけ、夢を操作することが出来るのがDormioであるというわけだ。
Dormioが夢を操作する仕組みとは?
それでは一体Dormioはどのようにして眠っている人に働きかけ、夢を操作できるというのだろうか。
その仕組みはこうだ。
Dormioを手首に装着した状態で人が眠りに落ちると、専用のアプリを通じて音声による合図が送られる。
この合図は夢のテーマに関連したものとなっており、実験の際には49人の被験者に対し”一本の木について忘れずに考える”というテーマに関連した音声が送られたという。
さらにDormioのセンサーが装着する人が眠りに落ちたことを示す生理的データを捉えると、システムにより被験者は僅かな間起こされ、寝ていた間にどのような夢を見ていたか口頭で伝えなければならない。
するとその内容がアプリに記録され、その後被験者は再び眠りにつくことを許される。
しかしその後も被験者は短時間の睡眠と覚醒、口頭での夢の内容の説明を繰り返し、ヒプナゴギアの状態を続けることとなる。
その結果、実験では被験者の夢の67%において木が登場していたことが明らかになったという。
夢を操作する目的とは?
Haar Horowitz氏はじめとする研究者らによると、今回行われた実験の目的はDormioが入眠期を認識し、成功裏に夢を操作することが出来るか否かその能力を評価することであったという。
一方、夢の操作を行うことが可能となれば、様々な用途に応用することが出来る可能性がある。
Haar Horowitz氏ら研究者によると、Dormioの技術は睡眠による記憶の固定を含む様々な学習法において応用出来るかもしれないという。
さらにはヒプナゴギア状態にあった際の考えを、意識のある状態で思い出すことの出来るよう刺激することにより、創造力を高めることや問題解決の助けとすることまでもが出来るかもしれないとのことだ。
これについてHaar Horowitz氏は「特定のテーマに関する夢を見るということは、このテーマに関連する創造的なタスクのような睡眠後に利益をもたらすように思われる」という。
「これは夢から創造的な着想を得たメアリー・シェリ(注:英国の小説家で代表作は『フランケンシュタイン』)やサルバドール・ダリ(注:スペイン出身の画家でシュルレアリスムの代表的作家)といった歴史上の人物を鑑みると驚くべきことではない。この違いは、我々はこれらの想像力に富む有益な夢を定められた方法により意図的に誘発させるということだ」
今回Haar Horowitz氏らによって開発された夢の操作を可能とさせる装置「Dormio」。
これを用いて自身が望むような夢を見ることが出来るようになる日は近いのかもしれない。(了)
出典:Science Alert:MIT Tests ‘Dream Incubation’ Device That Manipulates The Content of People’s Dreams(7/30)
出典:Tech Times:MIT Has Created a Device That Can Manipulate People’s Dreams and They are Testing it Now(7/30)