社員の最低賃金アップのため自分の年棒を90%カットしたCEO、決断の理由をツイート
「社員のために」と口にはするが、実際の行動が伴わない経営者は多い。だが、アメリカの決済代行会社「Gravity Payments」のCEOは違った。
2015年に自分の年棒を約90%カットし、社員の最低賃金を引き上げたことで知られる彼が、最近、その決断のきっかけとなった出来事をツイッターで明かした。
社員の最低年収を約768万円にアップ
Gravity Payments社のCEOであるDan Price氏は、2015年、それまで110万ドル(約1億2000万円)あった自分の年棒を7万ドル(約768万円)に削り、同時に社員の最低年収を、同額の7万ドル(約768万円)に引き上げた。
その後会社は収益を3倍に伸ばし、ハーバード・ビジネス・スクールの研究事例としても取り上げられているそうだ。
おそらくPrice氏には、会社以外からも収入があるだろう。だがそれでも、自己の年棒をここまで減らす決断は容易でなかったはずだ。そのきっかけとなったのが、社員のデスクの上に見つけたマクドナルドのマニュアルブックだったという。
ダブルワークを隠していた女性社員
「私は良くないCEOだった。7年前、私は、Rositaという社員のデスクの上にマクドナルドのトレーニングハンドブックがあるのを見つけた」
Price氏はこうツイートする。その女性社員は、会社からの給料だけではやって行けず、退社した後に夜11時までマクドナルドでバイトしていたのだった。
彼女の年収は3万ドル(約329万円)。しかし、大学時代の奨学金の返済があり、生活は苦しかったようだ。ダブルワークが会社にバレるとクビになると思い、1年半の間、ハンドブックを隠していたそう。こうした事情を彼女から聞いたPrice氏はショックを受けた。当時の胸中について、彼はこう言っている。
「彼女はマックのハンドブックを隠し、ダブルワークのせいでクビになると思っていた。私が作り上げてしまったコーポレートカルチャーは、どんなものか? それは『不足』と『恐怖』だったのだ」
その後Price氏は、彼女からの提案に従って年収を1万ドル(約109万円)アップ。その代わりに、マクドナルドを辞めて会社の仕事に集中してもらった。すると「彼女の精神状態が良くなり、パフォーマンスが上がり」、すぐに業務運営ディレクターに昇進してしまったそうだ。
これを見たPrice氏は社員の最低賃金を、それまでの倍額に当たる7万ドル(約768万円)に引き上げたのだった。
ところで、Price氏には、高額年棒への未練はないのだろうか?
それについて彼はこう言っている。「億万長者のライフスタイルに未練は全くありません。お金で幸せを買えるのは、貧困から抜け出すときです。裕福になってから、さらにスーパーリッチになっても、幸せはそれ以上増えません。そこから幸せを増やすには、自分が正しいと信じる事を実行することです」(了)
出典元:Metro:CEO takes 90% pay cut to raise staff’s minimum salary to £50,000 – and the company is now thriving(7/30)
出典元:Wikipedia:Dan Price