馬のジャンプ競技に挑戦する牛が可愛い
フランスの小さな牧場で生まれたAstonという名の牡牛は、売られて屠殺場に送られるはずだった。
だが、一人の女性調馬師とめぐり会い、馬のように障害物を飛び越える珍しい牛として、ヨーロッパ各地でショーを開いている。
牛を愛した調馬師
フランス・ストラスブール市に住む女性調馬師・Sabine Rouasさんは、20年間愛情を注ぎ続けて来た愛馬を失った。今から5年前のことになる。以来、彼女は馬に愛着を持てなくなってしまった。
馬の代わりに彼女が興味を持ったのは牛だった。その頃、彼女の家の近くには乳牛の牧場があり、彼女はそこの牛たちを可愛がっていた。そしてある日、一匹の牝牛が子供を産む。
その子牛Aston(当時の名はM309)はなぜかSabineさんに懐き、牧場を訪れる彼女から片時も離れないようになった。おそらく、妊娠中の母牛に話しかけていたSabineさんの声を、お腹の中でAstonは聴いていて、覚えていたのだろうと彼女は考えている。
そのAstonは、食肉となるために屠殺場送りが決まっていた。乳を出さない牡牛は、乳牛の牧場に必要ない。
1.3トンの体でジャンプ
Sabineさんは牧場主と掛け合ったが、Astonの屠殺場行きは変わらなかった。そこで彼女は1才のAstonと母牛を譲り受け、自分の厩舎で飼うことにした。
ちょうど同じ時期に、Sabineさんはポニー(小形の馬)に障害飛越を教え込んでいたのだが、牛のAstonはそのポニーと仲良くなり、訓練の様子を見てジャンプの真似をするようになった。
Sabineさんはその頃のことを、海外メディアにこう話している。
「私がSammy(ポニーの名前)にジャンプの基本技を教えていると、Astonは熱心に見ていました。それで、ジャンプ以前のもっと基本的なことを——命令に従ったり、一緒に歩いたりすることを、Astonに教えてみたのです」
そして約1年後、Astonはまるで馬のように彼女を背に乗せて走るようになっていた。また、1.3トンの巨体でありながら、何種類かのジャンプの技術も身につけていた。
ヨーロッパ各地で馬場馬術を披露
3年ほど前から、牛のAstonとSabineさんは、地方で開かれる催事やフェスティバルに出演し、障害物ジャンプをショーとして披露するようになった。牛の巨体が宙を跳ぶ珍しいショーは、たちまち話題になった。
Ce matin, travail avec Aston aux écuries de la Commanderie et avec un essai avec Charlotte Risch, grande cavalière de spectacles équestres.
現在、SabineさんとAstonはヨーロッパ各地を巡業している。
牛のAstonは早足(トロット)や襲歩(ギャロップ)、後退、円形歩法といった馬場馬術(ドレサージュ)の技術もマスターしている。Sabineさんを乗せたまま高さ1メートルの障害を飛び越えられるそうだ。
巡業中のAstonは、仲のいいポニー(Sammy)と離れ離れになるので少しさびしそうだが、ショーで活躍できることに十分満足しているとSabineさんは言う。(了)
出典元:Odditycentral:Meet Aston, the Showjumping Bull Who Thinks He’s a Horse(2/28)