米株式市場が再び下落、トランプ関税による貿易戦争への懸念で売りが先行

アメリカの株式市場は4月10日、再び下落し、世界経済の先行きが不透明となっている。
ダウ平均株価やナスダックなども下落
トランプ大統領は9日に、基本となる10%の関税と、各国に対する上乗せ分の関税の発動を発表。しかしそれから1日も立たずに、上乗せ分の関税を90日間停止すると明らかにし、アメリカや世界の株式市場が高騰した。
ところが10日には、再びアメリカの株式市場が下落。取引終了時には、ダウ平均株価は前日比で2.5%下落し、ナスダック総合指数も4%以上下がり、S&P500も3.4%下落した。
トランプ政権はこの日、中国への関税が、「相互関税」の125%に加え、すでに年初に課していた合成麻薬「フェンタニル」疑惑による20%の関税と合わせ、累計で145%になったと発表。これにより市場では、再び貿易戦争悪化への懸念が高まった。
しかもこの株価の下落は、共和党議員が90日間の関税停止を決めたトランプ氏を「称賛」する中で起きたという。
そのトランプ氏は、ホワイトハウスの演説で、10日の株価の下落について、「移行期間」の問題だと一蹴し、次のように述べた。
「我々は非常に良い状況にあると考えている。うまくやっていると考えている。移行コストや移行の問題はまた発生するだろうが、最終的には素晴らしい結果になるだろう」
しかし前財務長官のジャネット・イエレン氏は、トランプ氏の経済政策を「正常に機能している経済に政権が負わせた、最悪の自滅行為だ」と酷評した。
「トランプ氏が市場に屈服した」
そもそもトランプ大統領は4月2日、ホワイトハウスのローズガーデンで、「解放の日」や「偉大なアメリカの黄金時代」になるとし、各国への相互関税を発表。これは世界に衝撃を与えた。
その後も、トランプ氏は「交渉はしない」「相互関税は実行される」と強気の姿勢を示していたが、9日の発動後、株価が暴落。13時間後には、上乗せ分の関税を90日間一時停止すると発表した。
トランプ氏はこの関税の停止について、「人々が少し行き過ぎていて、平静さを失い、少し怖がっていると思ったからだ」と説明。またベッセント財務長官も、停止措置により新たな通商協定を交渉する余地が生まれると述べ、当初からこれが大統領の戦略だったと主張した。
共和党の議員たちも、関税の一時停止の決定を賞賛。マイク・ジョンソン下院議長などはSNSで「まさに『ディールの芸術』だ」とまで述べ、トランプ氏を褒めたたえたという。
しかし実際の停止の決断は、アメリカの国債が大量に売られ、長期金利が急激に上昇したためと言われている。これにより金融危機への懸念が高まり、ベッセント財務長官もトランプ氏に、90日間の関税停止を進言したと伝えられている。
ワシントン・ポスト紙に寄稿したアーロン・ブレイク氏も、「ベッセント財務長官や、リーヴィット報道官らが主張するように、これは戦略的なものではなく、まさにトランプ大統領が(市場に)屈服したもう1つの例であり、しかも大きな敗北である」と主張した。
市場に屈服したと言えば、2022年の9月にイギリスの首相に就任したトラス氏のケースがある。彼女は首相に就任後、非現実的な大型減税政策を発表した。
しかしその後、債券市場が暴落し、長期金利が上昇。通貨や株、債券のトリプル安も招き、経済を混乱させたとして10月20日、トラス元首相は辞任を発表した。
今回の相互関税の停止は、トランプ氏が40年以上にわたり提唱してきた看板政策から、突如として撤退したことを示しており、トランプ氏の経済政策、ひいては政権全体の信頼性がどれほど損なわれたのかは、やがて明らかになると考えられている。(了)
出典元:The Guardian:US stocks fall again after rally following Trump’s shock retreat on tariffs(4/10)
出典元:The Guardian:Trump’s about-face on tariffs reveals chaos at the core of his presidency(4/10)