トランプ氏がFRB議長の解任に圧力、株式市場が再び下落

アメリカのトランプ大統領は4月21日、連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長を再び非難したため、株式市場が下落した。
大統領が、金利を下げるよう要求
トランプ氏は、パウエル議長を「大いなる負け犬(loser)」と呼び、金利を引き下げないことを批判した。
SNSにおいても「あまりにも遅すぎる、大いなる負け犬が、今すぐに金利を下げなければ、経済は減速する可能性がある」と投稿したという。
トランプ氏は、ここ最近、自らの関税政策による経済への影響を相殺するため、または株式市場の下落を食い止めるため、金利を引き下げるよう圧力をかけてきた。
しかしパウエル議長は4月16日、「関税は、少なくとも一時的にはインフレ率を上昇させる可能性が非常に高い。インフレの影響はより持続的になる可能性もある」と発言し、近いうちに利下げを行う計画はないと述べた。
金利を下げると、借り入れコストが低減し、個人や企業の支出も増加し、景気が浮揚するが、同時に物価も上昇し、インフレが起きやすくなる。
株式市場も、FRBの独立性に対するトランプ大統領の攻撃に反発し、21日には再び下落に転じたという。
取り戻していた損失分も帳消し
実際に、ダウ平均株価は2.5%下落して21日の取引を終了。ハイテク株中心のナスダック総合指数も2.5%超下落、S&P500は2.4%下落した。
「テスラ」や「エヌビディア」といった人気ハイテク株も下落し、ドルは主要通貨の大半に対して数年ぶりの安値に下落したという。
それまで株式市場は、トランプ氏が相互関税の上乗せ分を90日停止すると発表してから、損失分をある程度取り戻していたが、今回のFRB議長への批判により、ほぼ全て帳消しになったそうだ。
中央銀行の「二重の使命」
実は、より高い金利は物価を押し下げる可能性があるが、同時に失業率上昇のリスクも伴う。そのためパウエル議長は、中央銀行の「二重の使命」、すなわちインフレを抑制しつつ雇用を最大化させることを目標に掲げてきた。
そしてアメリカのインフレ率は2022年6月に9%でピークに達したが、FRBによる慎重な金利調整により、ここ数年で緩やかに低下。FRBは現在、インフレ率の目標を2%に設定している。
先月、発表されたインフレ率も2.4%に留まり、2カ月連続で低下。またFRBはここ数年、失業率を4%前後と比較的低い水準で維持してきたそうだ。
議長の解任は可能なのか?
FRBは長らく非政治的な連邦機関として扱われてきたが、トランプ大統領は最近、任期が2026年5月に満了するパウエル議長の解任案を示唆した。
このような動きは前例がなく、ウォール街の株価をさらに急落させる可能性が高いという。専門家もFRBの議長が解任されたら、市場から「厳しい反応」が出るだろうと予想している。
もっともトランプ大統領に、パウエル議長を解任する権限があるかどうかは、明らかになっていない。
連邦最高裁判所は現在、トランプ大統領に任期満了前の連邦職員を解任する権限を拡大する訴訟を審理しているが、この訴訟の結果がFRBにまで及ぶかどうかも不明とされている。
パウエル議長も「FRBの独立性は法律で定められている」と主張しているが、トランプ政権は議長を合法的に解任できるかどうかについて、検討しているという。(了)
出典元:The Guardian:US stock markets fall again as Trump calls Fed chair ‘a major loser’(4/21)