トランプ関税は違法、ホワイトハウスが判決を下した判事を批判

アメリカの裁判所で先日、トランプ大統領の関税が違法だとの判決が下され、政権側は判事を批判した。
「大統領に与えられた権限を超えている」
ニューヨーク市にある国際貿易裁判所は5月28日、トランプ氏が各国に課している広範な関税措置について、「大統領に与えられた権限を超えている」との判決を下した。
この訴訟はニューヨーク州やアリゾナ州、複数の企業が起こしたもので、3人の判事は「アメリカの憲法では、関税などを課して徴収する権限は原則として議会が有する」や「国際緊急経済権限法(IEEPA)は、このような際限のない権限を大統領に与えていない」と指摘。一連の関税措置は、違法だとの判決を下した。
これに対してトランプ政権は5月29日、「国家安全保障と経済への取り返しのつかない損害を回避するため」、判決に対する「緊急救済」を申請して控訴。控訴裁判所は、控訴審を待つ間、違法とする判決を一時停止することに同意したという。
トランプ政権は控訴審で敗訴した場合、最高裁に上告するとみられている。
根拠となっていた国際緊急経済権限法
そもそも関税は通常、議会の承認が必要であるが、トランプ大統領はこれまで、国の貿易赤字が国家非常事態に相当すると主張し、国際緊急経済権限法(IEEPA)を基に、カナダやメキシコ、中国、そして世界各国に「相互関税」を課した。
国際緊急経済権限法(IEEPA)とは、大統領が国家非常事態を宣言すれば、「輸入の規制」を含む広範囲な権限を与えるものだ。
しかし貿易裁判所の3人の判事は、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づくすべての関税発動命令を即時無効と判断。トランプ大統領に対し、10日以内に恒久的差し止め命令を反映した、新たな命令を出すよう命じたという。
世界の金融市場は、この判決を歓迎。5月28日には、米ドルがユーロ、円、スイスフランに対して急騰し、ヨーロッパではドイツの株価指数「DAX」が0.9%上昇。フランスの株価指数「CAC40」も1%上昇し、イギリスの株価指数「FTSE100」も、取引開始時に0.1%上昇したそうだ。5月29日には、アジアの株価指数も上昇した。
3人の判事が国の脅威になっている
しかしホワイトハウスのリービット報道官は5月29日、今回の判決を「司法の行き過ぎ」と呼び、最高裁の介入を求めた上で、3人の判事を激しく非難した。
「これらの判事らは、国際舞台におけるアメリカの信頼性を損なわせるための、脅威になっている(脅している)。政権は既に、この悪質な判決を破棄するため、控訴審の差し止めと即時の行政差し止めを求める緊急申し立てを提出している。しかし最終的には、憲法と国家のために、最高裁がこれに終止符を打たなければならない」
そもそも3人の判事はトランプ大統領やオバマ大統領、レーガン大統領らによって任命されていたが、リービット報道官は3人を「活動家の裁判官」だと批判。次のように述べた。
「大統領がこれらの強力な関税を課す根拠は法的に正当であり、常識に基づいています。トランプ大統領は、正確に考えています。国内製造能力を拡大できず、自国の安全で重要なサプライチェーンを持たず、防衛産業基盤が外国の敵対国に依存している限り、アメリカは長期的に安全に機能できないと」
その上でリービット報道官は「国際貿易裁判所の3人の判事は、この見解に反対し、司法権を露骨に乱用してトランプ大統領の権限を奪い、アメリカ国民から与えられた使命の遂行を阻止した」と厳しく批判した。(了)
出典元:ABC News:White House slams judges who ruled against Trump on tariffs(5/30)
出典元:The Guardian:Trump wins temporary reprieve as he fights against court block on tariffs(5/28)