巨大IT企業への規制強化、ヨーロッパ委員会が2つの法案を発表
EUで新たに巨大IT企業を規制する2つの案が発表され、市場の透明化を求める動きが起きている。
「デジタル市場法」と「デジタルサービス法」
その法案とは、行政を担うヨーロッパ委員会が発表した、「デジタル市場法」と「デジタルサービス法」だ。
そもそもEUでは2000年に導入されたEコマース指令(電子商取引指令)があり、ITテクノロジー企業を規制する取り組みが行われてきた。
しかし今回、さらに規制を強化する。対象となるのはEU域内の人口のおよそ10%にあたる4500万人以上のユーザーを抱える大手IT企業の予定で、そこにはグーグルやフェイスブック、アップル、アマゾンなども含まれる見通しだ。
ヨーロッパ委員会のMargrethe Vestager氏は、この法案の目的について、「2つの提案は1つの目的のために行われます。それは私たちが、ユーザーとして、安全な製品やサービスの幅広い選択肢にオンラインでアクセスできるようにすることです」と述べている。
支配的な地位の乱用を防ぐ
「デジタル市場法」とは、大企業の独占状態だった市場に、他のプレーヤーの出現を許し、大企業の支配的な地位の乱用を防ぐことを強制するものだ。
実際に巨大IT企業は、ユーザーが最初からインストールされたソフトウェアやアプリをアンインストールするのをブロックするなど、「明らかに不公平」な設定を行ってきたという。
このような慣行を禁止し、「ゲートキーパー」と呼ばれる大企業が自社製品を優遇せず、サードパーティー企業の製品やサービスの機能を制限することを抑止。自社のサービスを競合他社よりも高くランク付けすることを禁止するそうだ。
そして大企業は、サードパーティー企業のソフトウェアが適切に機能し、自社のサービスと相互運用できるようにするなど、特定の対策を「積極的に」実施することが求められる。
コンテンツを削除されたユーザーへの保護策も
一方で「デジタルサービス法」では、悪意のある表現から偽造品まで、違法なコンテンツを削除する責任をデジタルプラットフォームに義務付けているという。
また、プラットフォーム側(Facebookなど)によってコンテンツが誤って削除されたユーザーに対して、いくつかの「セーフガード(保護策)」が設けられることになる。
ヨーロッパ委員会はまた、プラットフォーム側のオンライン広告と、ユーザーにコンテンツを推奨するために使用されるアルゴリズムの透明性を高めることも望んでいるそうだ。
最後に、違法な商品やサービスの販売者を特定するために、オンライン市場でのビジネスユーザーに対する新しい「追跡(トレーサビリティ)」のルールを課したいと考えている。
NGO「規制するための良い第一歩」
提案された新しい法案は、法律になるまでに、数年ではないにしても、まだ数ヶ月かかる可能性があるという。さらにその後も、欧州議会と欧州加盟国評議会からの承認が必要となる。
Vestager氏は、2つの法案が約1年半で法律になることを望んでいると述べたそうだ。
オンラインで権利と自由を擁護するNGOの「欧州デジタル権利(EDRI)ネットワーク」は、ヨーロッパ委員会の提案を「ビッグテック企業が獲得した莫大な経済的、社会的、政治的権力を規制するための良い第一歩」と明言。
ただ同時に「委員会が、侵入型のデータ収集ビジネスモデルや、(他のITベンダーに乗り乗り換えにくくさせる)ユーザーの意図的なロックイン(閉じ込め)など、プラットフォーム経済の体系的な問題に取り組むことをやめたのは残念だ」と付け加えている。(了)
出典元:euronews:Digital Services Act: Brussels vows to ‘put order into chaos’ of digital world with new tech laws(12/15)