「NATOのせいで人が死ぬ」ゼレンスキー大統領が恨みのスピーチ
必死になってNATO(北大西洋条約機構)に助けを求め続ける、ウクライナのゼレンスキー大統領。直近では、ウクライナ領空を飛行禁止区域に設定してロシア機が入れないようにしてほしい、と求めていたが、NATOは今月4日にそれを拒否した。
NATOの冷たい態度に苛立ったのか、ゼレンスキー大統領はスピーチをビデオで発表。ロシアだけでなく、米国をはじめとしたNATO諸国にも厳しい非難の言葉を投げつけた。
これはロシアのメディア「RT」と西側メディアの両者が報じており、内容はほぼ同じだ。
NATOのせいで人が死ぬ
「それがどういうことになるかを知りながら、NATO諸国が賛成したのは、飛行禁止区域を設定しないことだった。ウクライナ上空を飛行禁止にすればロシアが怒って、NATOに直接矛先を向けると彼らは思っているようだが、我々から見れば、それはNATOが自分達の中で勝手に生み出したストーリーだ」
ゼレンスキー大統領はビデオスピーチの中でこう述べ、さらに、
「あなたたち(NATO)のおかげで人々が死ぬだろう」
とダイレクトに批判を投げつけた。
ウクライナ上空を飛行禁止区域とすれば、そこに入り込んだロシア機をNATOの戦闘機が追い払わねばならず、場合によっては戦闘になる。それをきっかけに、NATO対ロシアの全面衝突にもなりかねない。NATOは、こうした理由からウクライナの要求を拒否した。
支援物資の少なさにも不満
加盟はしていないものの、ウクライナはNATOの「パートナー国」になっている。だが、そのパートナーに対して、NATOはあまり支援をしていないらしい。ゼレンスキー大統領はそこも不満らしく、スピーチでこう述べている。
「NATOが、その物資調達システムを活用して今やってくれていることは、50トンばかりの軽油をウクライナに配分することだけ。それで全てだ」
「おそらく、我々が軽油を使って、『ブダペスト覚書』を焼けるようにだろう。軽油ならよく燃える。しかし、こちらからすれば、ロシアの砲火によってすでに『ブダペスト覚書』は焼き払われているのだ」
1994年の欧州安全保障協力機構で署名されたブダペスト覚書では、米国、ロシア、イギリスの核保有3カ国が、核を持たないウクライナに安全保障を提供することになっている。
しかし実際のところ、米国やイギリスがリードするNATOの動きは消極的だ。そんな現状を、ゼレンスキー大統領は痛烈に皮肉ったことになる。(了)
出典元:The Washington Times:Zelenskyy accuses NATO of allowing bombings(3/4)
出典元:RT:NATO will pay for its weakness, Kiev says(3/4)
出典元:Wikipedia:ブダペスト覚書