化石燃料の使用で生ずる大気汚染により、世界中で毎年500万人以上が死亡
大気汚染に関する大規模な研究の結果が発表され、これまでの推定を上回る数の人々が、化石燃料の使用により死亡していたことが示された。
510万人死亡の原因
これまで化石燃料の使用による大気汚染の影響について、特に死亡率の推定値には大きなばらつきがあったという。
しかし今回の新しいモデル研究では、産業、発電、輸送における化石燃料の使用による大気汚染が、世界中で年間510万人の死亡の原因であることが示唆されたそうだ。
この研究結果は、ドバイで開催されている気候変動サミット「COP28(第28回気候変動枠組条約締約国会議)」の前夜、科学誌『The BMJ』において発表された。
英・米・独など研究者が参加
大気汚染は病気や死亡の主なリスク要因となっているが、死亡原因を特定の大気汚染源に帰した世界的な研究はほとんどなく、その結果は大きく異なっていた。
これに対処するために今回、イギリス、アメリカ、ドイツ、スペイン、キプロスの国際研究チームは、新しいモデルを使用して、化石燃料に関連する大気汚染による死亡者数を推定。
化石燃料を、クリーンで再生可能なエネルギーに置き換える政策により、潜在的な健康上の利点を評価したという。
2019年のデータを分析、超過死亡を評価
研究者たちは2019年の世界疾病負担調査のデータや、NASAの衛星を基にした微小粒子状物質と人口データ、2019年の大気化学、エアロゾル、相対リスクモデリングを使用して超過死亡を評価したそうだ。
その結果、2019年に世界中で死亡した830万人の死因が、大気中の微粒子(PM2.5)とオゾン(O3)によるものであり、そのうち61%(510万人)の死が化石燃料に関連していたことが示されたという。研究者らは、論文において次のように述べている。
「特に化石燃料の段階的廃止による大気汚染排出量の大幅な削減は、健康に大きなプラスの結果をもたらす可能性がある。今回の結果は、化石燃料の使用による大気汚染に起因する死亡率の負担が、これまでのほとんどの推定よりも高いことを示している」
今回の「COP28」では、化石燃料を「段階的に廃止」することも話し合われ、初めて合意に至るかどうかも注目されている。(了)
出典元:The Guardian:Air pollution from fossil fuels ‘kills 5 million people a year’(11/29)