井戸の中で発見された遺体、古代の書物に記されていた人物の可能性
ノルウェーで井戸の中から男性の遺体が発見され、約800年前の書物に記されていた人物である可能性が指摘されている。
「スヴェリス・サーガ」
その書物とは、「スヴェリス・サーガ(Sverris saga)」と呼ばれ、12世紀後半に権力を握った野心的なノルウェー王・Sverre Sigurdssonの生涯が描かれていたという。
物語は182節からなり、1202年にSverre王が死んだ後、王と親しかったアイスランド人の修道院長によって書かれたと考えられている。
その1節には、1197年に現在のトロンハイムにあるSverresborg城が敵の手に落ち、その際1人の兵士が井戸に投げ込まれていた記述があるそうだ。
そして2014年と2016年、考古学者アンナ・ペテルセン氏が率いる研究チームが、その井戸から男性(30歳から40歳)の遺体の一部を掘り出したという。
頭蓋骨には鈍器による損傷も
その遺体の身長は約1.75mで、革靴だけを履いて井戸に放り込まれ、足と左腕がなく、分離された頭蓋骨には、鈍器による損傷と鋭い切り傷があったという。
「スヴェリス・サーガ」には、1197年に敵であるローマ・カトリック教徒が、王のいない間にSverresborg城を攻撃して奪い、城内のすべてを破壊した様子が詳細に描かれているそうだ。
そして「Baglers(司教の杖)」と呼ばれる敵軍が、王側の「Birkebeiner(白樺の足)」と呼ばれる兵士の食事中に、城へ侵入。死んだ人間を捕まえて、頭から井戸に投げ込み、さらに石を放り込んで積み上げたことが記されていたという。
すでに1938 年に発見されていた
実は1938 年に井戸を発掘していた考古学者が、坑道の約7m下で、何層もの石の下から埋もれていた人骨を発見していた。
しかしその後、第2次世界大戦が勃発。ドイツ軍がその地域を占領したため、「井戸の人」はそこに残されたままになったそうだ。
そして2014年に再び、井戸の中から遺体が発見され、その後も調査が行われ、その男性が王の兵士「Birkebeiner」である可能性が示されたという。
この研究を行っているノルウェー科学技術大学のマイケル・マーティン氏は「井戸の中の遺体が、この物語で描かれている人物のものであると100%確信することは決してできない」としながらも、「状況的、かつ科学的な証拠は非常に説得力がある」と述べている。(了)
出典元:The Guardian:Remains of man whose death was recorded in 1197 saga uncovered in Norway(10/27)