意外に賢い?小さな“車”を運転出来るよう調教されたネズミが話題に
ネズミといえば、ペットとして飼っていてもしつけが難しい…といったイメージを持つ人が多いのではないだろうか。
ところがそんなネズミに対し、英国の研究機関が“車”を運転出来るようにしつけ、話題となっている。
起動から方向転換の方法まで覚えたネズミたち
ミニサイズの“車”を運転できるようネズミをしつけた研究を行い、注目を集めているのは英国リッチモンド大学の研究者ら。
研究においては17匹ものネズミに対し、エサと引き換えに車を運転させるため、しつけを行ったという。
この研究を率いたKelly Lambert氏によると、車はプラスチック製の小さな透明な瓶にアルミニウム製の板や車輪などを取り付け、電気自動車としたものとのこと。
車の“運転室”に当たる部分には銅製のワイヤーが平行に設置されており、ネズミがアルミニウム製の板の上に座りワイヤーに触れることで、車を操縦することが出来る。
ネズミは数カ月にも及ぶしつけを受けた後、車を操縦する方法を覚えたと共に、どのようにすれば方向転換出来るかということまでをも学習したという。
ネズミはなぜ運転方法を覚えることが出来たのか?
それではLambert氏らは、一体いかにして車を運転する方法を覚えさせるという、高度なしつけをネズミに対し行うことが出来たのだろうか。
研究においては、17匹のネズミを2つのグループに分割。
そのうちの1つのグループは平凡な実験室用のケージの中で育てる一方、もう1つのグループには精神的な刺激を与えるため、おもちゃや梯子、ボール、木片といったものが備えられた“豊かな環境”で育てた。
するとケージで育てられたネズミは“運転試験に不合格”であった一方、“豊かな環境”で育てられたネズミたちは、車の運転をより上手にこなすことが出来るようになったという。
さらに実験後、Lambert氏は双方のグループのネズミの糞を採取。
それを検査すると、いずれのグループのネズミの糞からも高いレベルのコルチコステロンとDHEAが検出されたという。
コルチコステロンとはホルモンの一種で、自然界で天敵から逃げたり身を守ったりするような危険な状況に置かれた際、あるいは愛する人について気に掛けたりするような時に分泌されるもの。
それに対しDHEAは、持続するストレスによりコルチコステロンが有害になった際、いわば緩衝材のような役割を果たすものだ。
これらのホルモンが検出されたことは、車を運転するという複雑な課題をこなすことが、ネズミにおいて感情的な回復力を増強させることに一役買ったことの証拠となっている、とLambert氏らはみている。
これについてLambert氏は、「運転がネズミに対し、環境をコントロールする感覚を与えることが出来るということが考えられる」と説明する。
実験の目的は精神病の治療法発展のため
一方今回の実験の目的は、ネズミにしつけを行うことそのものにあるのではなく、研究を通して人間における精神的な病の治療法を発展させることにある。
運転方法を習得したことにより、ネズミの場合“環境をコントロールする感覚”を覚えた一方、これは「人間においては、主体性や自己効力感といった感覚を高めることになるだろう」というLambert氏。
氏によるとネズミの脳は小さいながらに人間とよく似ており、そのため置かれた環境下において良好な精神状態を保つため、両者の脳の働きには“普遍的な真実”があるとしている。
感情面における回復力は、うつ病と言った精神的な病から身を守るために中心的な役割を果たすものの一つである、と指摘するLambert氏。
そのためどのような行為が感情的回復力を高めるのかということを知ることは、人間における精神的病をどのようにして治療するのかという手がかりになり得るという。
ミニサイズの車の運転方法を習得したネズミたち。“豊かな環境”に置かれたネズミのしつけがより成功したということは、ペットに対してのしつけがうまくいっていない飼い主にとっては考えさせられることではないだろうか。(了)
出典:CNN:Scientists taught rats to drive little rat-sized cars. It could advance human mental health Treatment(10/24)
出典:BBC:Rats taught to drive tiny cars to lower their stress Levels(10/24)