古代エジプトのミイラの声を初めて再現、CTスキャンで人工の喉頭を作り成功
古代エジプトの神官(司祭)がどのような声を出していたのかを調べる研究が行われ、声の一部が再現された。
ラムセス11世の時代の神官
今回の研究の対象となったミイラは「ネスヤムン」と呼ばれ、1824年に発掘され、その後イギリスのリーズ市立博物館に保存されていたという。
「ネスヤムン」は神官とされ、約3000年前のラムセス11世の統治下で、古代都市テーベのカルナックにある寺院において儀式を行っていたと考えられている。
またその後の調査で、この神官は当時、50歳代の半ばで死亡し、首の周りの骨も損なわれていなかったそうだ。
気道を作り、喉頭を接続
「ネスヤムン」の柩には碑文が刻まれ、そこには「死んだ後も話せるようになりたい」といった、死後の願いも書かれていたという。
そこで研究者らは、このミイラの生前の声を再現する取り組みを進めた。
2016年にこのミイラは総合診療所の「Leeds General Infirmary」へと運ばれ、CTスキャンが実施される。これにより研究者らは唇から「喉頭」までを通る「声道」のレプリカを作るための必要な情報が得られたそうだ。
その後、研究者らは3Dプリンターで気道を作り、そこに人工の「喉頭」を繋げたという。
そして「ア」や「エ」といった単音を再現させることに成功した。その音がこちら。
将来的には文章の再現も可能に
今回の研究は、これらの技術を成功させた最初の例とされ、将来的には死んだ人間が発する言葉の連なりや、文章なども再現できる可能性があるという。
研究に携わったDavid Howard教授は、次のように語っている。
「これは、過去の新しい扉を開く、とても興味深いプロジェクトでした。私たちは3000年間で初めて発せられる音を人々と共有できて興奮しています」
この音声は今後、リーズ市立博物館のミイラ展示室に加えられることになるそうだ。(了)
出典元:CBS:Listen to the sound of a 3,000-year-old Egyptian mummy(1/23)