新型コロナウイルスを約10分で検出できる、短時間検査システムを確立:長崎大学
長崎大学とキヤノンメディカルシステムズ株式会社が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)遺伝子検査システムを共同開発したのを、ご存じだろうか。
高い検出特異性も持つ
長崎大学感染症共同研究拠点/熱帯医学研究所の安田二朗教授、吉川禄助助教らのグループは、遺伝子増幅法である蛍光LAMP (Loop-Mediated Isothermal Amplification)法を用いた新型コロナウイルスの検出方法を開発。
検出感度、特異性及び迅速性などの基礎的な検証と、感染者から採取された臨床検体を用いた検証を行ったという。
その結果、臨床検体に対して15コピー以上のウイルス遺伝子を約10分で検出できることを確認。またSARSの病原体であるSARS-CoVは検出せず、高い検出特異性をもつことも確認できたそうだ。
前処理操作も含めて40分以内でできる
発表されたリリースによれば、今回の検査システムは患者検体から新型コロナウイルス遺伝子を検出するまでに要する時間が、検体の前処理操作(ウイルス遺伝子の抽出)を含めても40分以内になるという。
現行のリアルタイムPCR法では試薬と検体を混ぜた試料をいくつかの工程で処理してウイルス遺伝子を増幅させるため、約4時間を要するとされているが、それと比較しても同程度の感度で、より短時間でウイルスの遺伝子が検出可能になるそうだ。
しかもこの検査システム1台で、1日あたり(8時間換算)224検査以上が可能となっている。
また、このシステムで用いられる装置は、軽量かつコンパクトで操作性にも優れており、医療現場や離島等での使用に適しているという点が強みの1つとされている。
今回の研究では、現行のリアルタイムPCR法と同様の前処理、ウイルス遺伝子の抽出を行っている。
ただし咽頭又は鼻腔ぬぐい液を熱処理(95℃、10分)してウイルスを不活化するという簡便な前処理のみでも、抽出処理したものと同等の感度・検出時間でウイルスの遺伝子を検出できることを確認しているという。
研究グループらは19日から、まずは感染者に医療行為を行った医療従事者を対象にこの検査システムを使用し、長崎大学が臨床研究を実施し、ウイルスの遺伝子検出を検証するとしている。
季節性インフルエンザの検査で使われるような「迅速検査法」で、新型コロナウイルス用はまだないため、簡単に使える検査法として早期の実用化が期待されている。(了)
出典元:長崎大学:新型コロナウイルスを約10分で検出できるウイルス遺伝子検査システムの確立と長崎県内での臨床研究の開始について(3/19)