ニホンオオカミは犬により近い種だった可能性、現代のアジアの犬も受け継ぐ
日本の科学者により、約100年前に絶滅したニホンオオカミのゲノムに関する研究が行われ、その結果が発表された。
ニホンオオカミのゲノムを解析
その研究を行ったのは、神奈川県の葉山にある総合研究大学院大学、進化生物学者の寺井洋平氏と研究チームだ。
彼らは博物館にある標本や護身用の頭蓋骨などから、ニホンオオカミの完全なゲノムを抽出し、遺伝子情報を解析。同時に、柴犬を含む11匹の日本犬のゲノムを解読したという。
また研究者たちはそれらを、キツネやコヨーテ、ディンゴ、オオカミ、または現代の犬など、さまざまなイヌ科の動物のゲノムと比較した。
その結果、ニホンオオカミは明らかに他のオオカミや犬とは異なる独自のグループとして、分岐していたことがわかったそうだ。
ハイイロオオカミの亜種
また研究では、ニホンオオカミがハイイロオオカミの特徴的な亜種であることが確認されたという。
ハイイロオオカミとは現在もユーラシアから北米に広く分布するグループで、以前は東アジアにも生息していたとされている。
しかしニホンオオカミは、現代や古代のハイイロオオカミとは遺伝的に区別され、他のハイイロオオカミとの遺伝子の流れも欠如していることが分かったそうだ。
進化の系統樹を作成、犬に近いことが判明
さらに寺井氏と研究チームは、犬の進化系統樹を作成。その結果、ニホンオオカミは他のどの動物よりも、犬の系統に近いことが明らかになったという。
発表された論文の要約によれば「(遺伝子の)導入を最大限抑えた系統樹で見た場合、他のハイイロオオカミの系統よりも、ニホンオオカミが犬の単系統群にもっとも近いことがわかった」と書かれている。
ドイツ・ミュンヘンにあるルートヴィヒ・マクシミリアン大学の進化遺伝学者、Laurent Frantz氏は雑誌サイエンスにおいて、次のように述べている。
「もし、それが本当ならば、これは非常に重要です。これは犬に近いオオカミの集団を見る初めての機会だからです」
しかもニホンオオカミの祖先は、東ユーラシアへ移動してきた犬の祖先と交配し、混血を通じて、多くのアジアの犬がニホンオオカミの系統を受け継いでいると考えられるそうだ。
実際に現在、東ユーラシアで暮らしている犬のゲノムの最大5.5%が、ニホンオオカミの祖先に由来しているという。(了)
出典元:bioRxiv:The Japanese wolf is most closely related to modern dogs and its ancestral genome has been widely inherited by dogs throughout East Eurasia(10/11)
出典元:Science:Mysterious, extinct Japanese wolf may hold clues to origins of dogs(10/18)