犬は2つの集団から生まれた可能性、第2の祖先とは?
身近な存在である犬が、2つのオオカミの集団から生まれたとする研究結果が発表された。
アジアのオオカミが現代の祖先
そもそも犬は、人類が狩猟採集民として暮らしていた1万5000年~3万年前のどこかで、初めて家畜化されたと考えられている。
また過去の研究では、オオカミがアジアとヨーロッパで別々に家畜化されたが、アジアのオオカミだけが現代の犬の祖先に受け継がれたことを示唆していたという。
しかし今回の研究論文の筆頭著者である、イギリスにあるフランシス・クリック研究所のアンダース・ベルグストロム博士は、「我々の研究の重要な発見は、犬には二重の祖先がいるということです」と述べている。
古代のオオカミのゲノムを分析、比較
今回、ベルクストロム博士らは、10万年前までヨーロッパやシベリア、北米に生息していた古代のオオカミのゲノム72個を分析し、そのうち66個の塩基配列を初めて特定。
これらのゲノムを、初期および現代のイヌのゲノムと比較したという。
その結果、全体として犬は、直接的な祖先ではないものの、遺伝的には古代のシベリアオオカミに最も類似していることが明らかになったそうだ。
このことからベルクストロム博士は「基本的には、犬はアジアのどこかで家畜化されたことを示唆しています」と語っている。
アフリカや中東では別のオオカミから?
ただしシベリア、アメリカ大陸、東アジア、北東ヨーロッパなどの初期の犬の祖先は、アジアのオオカミだけに根ざしているように見えるものの、他の犬、特にアフリカと中東の犬、さらにヨーロッパでは、ニシオオカミ(western grey wolves)の集団からさらに遺伝的寄与を受けていることも判明したという。
このニシオオカミが第二の犬の祖先と考えられているのだが、ベルクストロム博士によれば、第二の祖先が最も多く含まれているのはイスラエルに生息していた7000年前の古代の犬だという。
しかも、このニシオオカミの集団からの寄与(受け継がれたもの)は、現代のすべての犬に見られ、バセンジー種のような中東やアフリカの犬には最も多く見られるそうだ。
ただしベルクストロム博士は「独立した2つの家畜化イベントがあり、その後にこれら2つの集団が合併したのか、それとも1回の家畜化プロセスがあり、その後に野生のオオカミからの混合があったのか、まだわかりません」と語っている。(了)
出典元:The Guardian:Dogs arose from two populations of wolves, study finds(6/29)