科学者がレーザーを使い、稲妻を誘導することに成功、スイスの山で実験
スイスの山で雷に関する実験が行われ、稲妻を操作することに成功したという。
昨年、スイス北東部の山で実験
この実験を行ったのは、フランスの研究機関「École Polytechnique」などの科学者たちだ。
彼らは昨年、スイス北東部のゼンティス山の頂上に強力なレーザー装置を運搬し、高さ124mの通信タワーの近くに設置。
そして嵐が来るのを待ち、昨年7月から9月にかけて、合計6時間以上にわたって雷雲に高速レーザーパルスを照射したという。
その結果、実験期間中に4回の上向き雷放電がレーザーによって軌道修正されたことが、落雷を記録する装置により確認されたそうだ。
7月21日に撮影された画像には、稲妻がレーザーの光路を50メートルほどたどる姿が映っており、実際にレーザーが稲妻を誘導していることが分かったという。
レーザーで稲妻の経路を作り、誘導
レーザーは、放電が流れやすい経路を作ることで、稲妻を方向転換させるという。
まずレーザーパルスを上空に発射すると、空気の屈折率の変化によりレーザーが収縮し、それが非常に強力になるため、周囲の空気分子をイオン化させるそうだ。
これにより上空にフィラメントと呼ばれる長い連なりができ、そこでは空気分子は急速に加熱され、超音速で飛び去り、低密度のイオン化した空気の流路が残される。
数ミリ秒の間続くこの流路は、周囲の空気よりも電気伝導性が高いため、雷が通りやすくなり、そこへ稲妻が誘導されることになるという。
脅威になる前に、雷を引き起こせる
もっともレーザーは強力なので、上空を飛ぶパイロットの目には危険なため、実際に実験でも上空が飛行禁止になったそうだ。
またレーザーシステムのコストは非常に高いが、雷放電を導く、より信頼性の高い方法である可能性があるという。
しかも、異なる波長で動作する強力なレーザーは、より長い距離にわたって雷を誘導し、雷が脅威となる前に雷を引き起こすことも可能だとされている。
今回の実験は、雷から地上設備や重要な機器を保護する方法を探るために行われた。(了)
出典元:The Guardian:Scientists steer lightning bolts with lasers for the first time(1/16)