初期人類は人口減少により、絶滅寸前だった可能性
初期人類が進化の過程で減少し、絶滅の危機に瀕していた可能性が、ある研究で指摘されている。
80万年前から90万年前の間に絶滅寸前
研究者たちによれば、80万年前から90万年前の間に、初期人類の祖先(原人)は、深刻な進化の狭まりによって絶滅寸前までいったという。
実際に研究者が3000人以上の現生人類をゲノム解析した結果、人類の祖先の人口(または子孫を残せる人数)は約11万7000年の間、約1280人にまで激減していたことが示唆されたそうだ。
研究者たちは、極端な気候変動がボトルネック(人口動態の狭まり、人口減少)を引き起こし、祖先の系統を絶滅の瀬戸際に追いやった可能性があると考えている。
存亡の危機により新種が出現か?
研究では、アフリカの10集団とアフリカ以外の40集団の、現在生存している3154人のゲノム配列を分析したという。
そもそも集団全体の遺伝子の異なるバージョンを調べることで、特定の遺伝子がいつ出現したかを大まかに知ることができるそうだ。
そして時間の経過とともに遺伝子が出現する頻度を推定することで、科学者は祖先の集団が時間とともにどのように増減したかを知ることができるという。
この研究論文の主筆者で、ローマ・サピエンツァ大学の人類学者であるジョルジョ・マンツィ教授は、「我々の研究から明らかになった数字は、現在絶滅の危機に瀕している種の数字と一致します」と述べている。
ただしマンツィ教授によれば、人口減少による存亡の危機が、新種「ホモ・ハイデルベルゲンシス」の出現の引き金になった可能性があるという。
「ハイデルベルゲンシス」は、「ネアンデルタール人」と「デニソワ人」の共通の祖先であるという説がある。また現生人類の「ホモ・サピエンス」は、約30万年前に出現したと考えられている。マンツィ教授は、次のように語っている。
「私たちが生き残ったのは、幸運なことでした。しかし、進化生物学では、新しい種の出現は、孤立した小さな集団で起こりうることがわかっています」
気候の大きな変化と一致
この人口減少は、氷河期が長期化し、海面水温が低下し、アフリカやユーラシア大陸で干ばつが長期化した可能性のある、地球規模の気候変動の時期と一致しているように見えるという。
また研究チームはこの時期が、化石の記録上、比較的空白になっている期間とも一致するとし、マンツィ教授も次のように述べている。
「約90万年前から60万年前までの間、アフリカの化石記録はほとんどないとは言わないまでも、非常に少ないことが分かっています。例えば、ヨーロッパでは、80万年前にホモ・アンテセッサー(Homo antecessor)と呼ばれる種が発見されましたが、その後20万年間は何も発見されていません」
ただし科学者の中には、このような極端な人口減少が、より局所的な現象だった可能性を提起している人もいるという。(了)
出典元:The Guardian:Population collapse almost wiped out human ancestors, say scientists(8/31)